vs"H"(中編その2)

「先手必勝だ、やってやるぜ!」

 龍野はマシンガンの引き金を絞るように引き、骸骨頭に12.7mm弾を浴びせる。

『龍野君、頼みがあるの』

 だが、ヴァイスが指示を挟んだ。

『何だ!?』


『二体のサイボーグを、完全に!』


『どうしてだよ!?』

 機能停止――ほぼ撃破に等しい指示――ではなく、生かす。言い換えれば、“半殺し”。

 唐突な指示に、龍野は疑問を隠せなかった。

『とにかく、最低限の反応だけ残しておいてちょうだい!』

『クソッ、わかったよヴァイス!』

 龍野は銃口の向きを調節しつつ、致命打が出ないように連射を続ける。

(だったら……制圧射撃あるのみ、だ!)

 一歩ずつ前進し、なるべく関節部分を狙って“物理的な行動不能状態”に持ち込む。

(あと少し……!)

 だが、銃口から出た火花マズルフラッシュが止まった。

(弾切れ……!)

 龍野はマシンガンを異空間に収納する。

 すると、障壁が展開した。骸骨頭の携行するサブマシンガンの弾丸が、命中したのだった。

「危ねえ……!」

 素早く大剣を召喚し、(龍野の視点で)左側にいた機体の両腕を素早く切り落とす。足も胴体との関節部分から、バッサリ切り離した。

「まず一体!」

 もう一機が抵抗を続けるも、龍野は意に介さず両腕と両足を切り落とした。

「よし!」

 念の為に、数秒様子を見る。

 だが、実際に行動する気配を見せない。

『ヴァイス、終わったぜ』

『ありがとう。龍野君、私の元まで二体を持ってきてくれないかしら?』

『無茶言うなあ、お前……!』

 ぼやきつつも、龍野は『重量調節グラビティ』を発動。順繰りに機体の重量を0gにし、持ち上げた。


「持って来たぜ」

 龍野はヴァイスのいる部屋に二体を持ち込むと、静かに床に置いた。

「ありがとう、龍野君。おかげで、これまでの謎を解明する手がかりを掴むチャンスを得たわ」

「“謎”、だと?」

「ええ。龍野君も違和感を感じたでしょ? いくつかの事象に」

 ヴァイスは、疑問を抱いた点を述べた。


 何故、ヴァイスの視界の外からゴリラが出現し、龍野を奇襲したのか。

 何故、金色のサイボーグ(G型)は二人の集中力が途切れた隙を突いて、毒ガス攻撃を実行したのか。

 何故、金色のサイボーグは毒ガスの充満する4番エリアのドーム周辺に集結し始めたのか。

 何故、骸骨頭(N型)が増援のようなタイミングで現れたのか。

 何故、市庁舎にいた人間の気配に疑問を抱いたのか。

 そして、何故、ハナノは謎のメモ書きを差し出したのか。


「そう言われれば、俺も……」


 龍野も同様に、疑問を抱いた点を述べた。

 何故、龍野の視界に映るように、金色のサイボーグは移動していたのか。

 何故、暴徒が列をなして龍野に襲撃してきたのか。


 これらのことを互いに列挙している内に、ある共通の言葉が脳裏をよぎった。


「「人間やサイボーグの種別問わず、操られていやがる(操られているわ)!」」


 そう仮定すれば全ての辻褄が合った。

「と、なると……。龍野君、八時間ちょうだい」

「何するんだ、ヴァイス?」

「龍野君のサポートを強化し、かつ、“操り人形の持ち主”を暴くわ」

 ヴァイスはそれだけ答えると、一人部屋の外に出た。

「ヴァイス……。俺のために、ありがとうよ……」

 部屋に残った龍野は、ぽつりと感謝をこぼした。


     *


「はい。その通りでございます。はい。では例の道具を最短時間で、本州に近く、かつ北西に存在する近未来的な都市(4番エリアのこと)と、西に存在する開発中の領域(5番エリアのこと)とを繋ぐ橋の近くにパラシュート投下してくださいませ。出来れば、開発中の領域側にお願い致します。それでは」

 ヴァイスが無線機を切った。

「私も、全力で当たらなくては……!」




今回の戦闘における犠牲者


   現場作業員……2,085人(14,595点)


お屋敷の住民たち…… 487人(4,870点)


  オカルト信者……1,219人(6,095点)


  他サイボーグ…… 0体(0点)


      合計……3,791人(25,560点)



現在の龍野の撃破スコア……15体(15,000点)

※機能停止に追い込んでいないため、変動無し


騎士突撃槍銃アサルト・マシンガンの残弾(途中経過)


      マシンガン…… 0 + 200×3 発


      グレネード…… 0 + 3×3 発



作者による追伸


 有原です。

 今回の犠牲者達ですが、龍野によって殺されましたね。ええ、直接的な原因は。

 ですが、正常に加点されております。何故でしょうね? などと引っ張るのは、やめにして。

 率直に申し上げます。


 ということです。


 そう言えば、4番エリアの戦闘(vs"G"の一連の話)において、お役人が不自然に死亡しておりましたね……?

 だからこそ、原因不明の減点が行われていたということです。

 しかも、それをGという、理不尽な行為まで行っているのですからね! どんな能力だよ、と言いたいところでございます!


 今回はここまでといたしましょう。それでは、また続きにて……。

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