vs"H"(中編その1)

 夕食を終えた二人は、ハナノから貸与された二部屋の内の一つに集まり、先ほど出来なかった“作戦会議”を行っていた。

「それじゃあ、まさか……。さっきの奴といい、お前の見た暴徒といい……サイボーグに、操られてるってのか!?」

「声が大きいわ、龍野君。けれどその通りよ。おそらく、まだ来るのでしょうね。“操られた人間”が。そうなったら……やむを得ないわ、『防衛のためのあらゆる行動』を事前に許可しておくわね」

「クソッ……どいつもこいつも、サイボーグってのはふざけてやがるぜ!」

 龍野は『防衛のためのあらゆる行動』を考えないように、サイボーグに対して毒づいた。

「それよりも、龍野君。仮眠していいわよ、私が傍にいるから」

「それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうぜ。何かあったら起こしてくれ」

「ええ」

 龍野は瞼を閉じ、体を休め始めた。


 少し経って、コツ、コツというノックの音が響いた。

 ヴァイスは急いでドアを開ける。

「はい」

「ハナノでございます……おっと、失礼をいたしました。姫殿下、これを」

 ハナノはメモ書きをそっと、ヴァイスに差し出した。

「それでは、失礼いたします」

 カチャンとドアが閉まった。

 ヴァイスは机の上の明かりを点けると、メモ書きに目を通した。そこには、こう書かれていた。


 “5, 6, 7, 8に一体ずついる。全て撃破してくれ”


(これは……番号は、おそらくエリアを指し示しているのでしょうね。けれど、“存在する一体”……何なのでしょう?)

 ヴァイスはメモ書きをドレスのポケットに仕舞うと、龍野の傍に再び寄り添った。

「うふふ、ぐっすり眠って……。そうよね、連戦で疲れたものね。見ているわ、龍野君」

 ヴァイスはまるで我が子をいつくしむかのように、龍野を見守り続けた。


 そこから一時間後。

「……ハッ! いつの間にか、眠ってしまっていたわね……。あら、龍野君は?」

 辺りを見回す。

 すると、念話が飛んできた。

『一旦外に出て、屋根の上に登ってくれ! 非常事態だ!』

『龍野君!?』

 龍野からの緊急の要請が飛び、ヴァイスは慌てて玄関まで向かった。そして魔法陣を展開し、魔力を噴出して屋根の上に飛ぶ。

『龍野君、要望通りにしたわ。今、どこにいるの!?』

『庭だ!』

 急いで辺りを見回す。

 すると、の姿を見つけた。

『こいつら、さっきお前が言ってた“操られた人間”ってのかよ!?』

『ええ。正確には、見たところ“ただの人間とも思えない存在”も混ざっているみたいだけれどね』

 龍野は事態を呑み込み、やむを得ずマシンガンを構えていた。

『龍野君、威嚇では駄目よ。操られた以上、現時点で助ける方法は無いわ』

『クソッ……!』

 龍野が毒づき、引き金に指をかけた。


 そして、あらゆる――既に暴徒と化した――存在の津波が、龍野を打倒せんと押し寄せた。


『畜生がぁああああああッ!』

 龍野は引き金を引き、津波に向けて発砲した。

 バタバタと――ある者は現場作業員、ある者は人ならざる存在、ある者はオカルト信者が――体に風穴を開けられ、倒されていく。

 しかし、そう簡単に津波は収まらなかった。

(クソッ!)

 龍野は信号を送り、ロケットグレネードを立て続けに3発撃つ。

 波の先端部分が、いくらか欠けた。

『ヴァイス、“魔力解放”をする。動くな』

『この距離で……!? 無茶よ、龍野君!』

『無茶を押し通すしかねえんだよ! わかったら動くな!』

 龍野は強弁し、マシンガンを異空間に収納する。

 そして腕を体の前で交差させ、体を前に屈曲させた。

(魔力量は正常、攻撃範囲は半径250m、対象は操られた人間……いや、“操られた暴徒達”のみ……!)

 津波の先端が、龍野に襲い掛からんとしていた。

(全て問題なし……!)

 暴徒が龍野を押し倒そうと、手を伸ばした瞬間――


 龍野は腕と体を、思い切り広げた。


     *


 龍野が戦闘中、ハナノは地下の自室に籠っていた。

「まさか、あの男女……。いや、それは後だ。ここから脱出できるのなら、二人の正体なんてどうでもいい。そうでなければ、わざわざを出した理由が見当たらないからな。って、おや? この反応は、まさか……!」

 モニターに映った画面を見て、ハナノは狼狽していた。

「あの二人に、倒してもらわなくては……!」


     *


「はあっ、はあっ……。これで、どうだ……!」

 暴徒を一網打尽にした龍野は、呼吸を整えていた。

『ヴァイス、近くに敵の気配はあるか?』

『あるわね』

 即座に返答するヴァイス。

『それも、見覚えのある骸骨よ』

『あの骸骨頭か……!』

 龍野はマシンガンを召喚し、即座に構える。

『引き続きモニターとサポートをするから、よろしく頼むわね』

『ああ、やってやるぜ……!』


 やがて、骸骨頭二体が姿を現した。



現在の龍野の撃破スコア……15体(15,000点)

※倒した敵がため、変動無し


騎士突撃槍銃アサルト・マシンガンの残弾(途中経過)


      マシンガン…… 98 + 200×3 発


      グレネード…… 0 + 3×3 発

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