vs"G"(前編)

「よし、着いたぜ」

「ええ」

 二人は近未来的な都市に到着した。

「ここは4番エリアよ、龍野君」

「ってことは、さっきのゴリラどもみてえなのがいる可能性が……」

「ある、わ。けれど躊躇ちゅうちょしていても何も始まらない。行くわよ」

 ヴァイスは龍野を従え、調査を開始した。

『龍野君』

 唐突に、念話を飛ばすヴァイス。

『何だ?』

『さっきは、私が至らないせいで不要な危険に晒してしまったわね。ごめんなさい』

『いいってことよ。見えてなかったんだろうし、俺が攻撃される直前に出やがったんだろ? それじゃ、誰でも見逃しちまうだろうが』

 先ほどの戦いの謝罪だ。

 しかし、龍野はあっさりと許す。当然だ、先ほどの奇襲は例え特殊部隊でも反応しきれない。

 まして、“唐突に表れた”となると、なおさらであった。

「ヴァイス」

「何かしら?」

「あのドームは何だ?」

「東京ドームに似ているわね。よく見ると、他のドームは幕張メッセのそれにも似ているわ」

「それに、何やら人だかりも出来てるみてえだしな。行ってみるか」

「ええ」

 二人は人だかりに向かい、歩き始めた。

「それにしても、すげえ混みようだな、おい」

「ええ。余程人気があるのね」

 のどかに談笑する二人。

 だが龍野の視界の端に、金色の物体が映った。

『ヴァイス』

 内密な話だ。念話に切り替え、龍野が呼びかける。

『何かしら?』

『不審な物体を発見した、サポート頼むぜ。それと』

 龍野は敢えて間を置き、心の準備を整えさせた。

『失敗しても、気にすんな。そう簡単にはやられねえからよ』

『うふふ、ありがとう』

 ヴァイスがわずかに微笑んだ。

 念話が終わったのを確認すると、龍野は金色の物体を追跡し始めた。


「ここは下水処理場か(違和感を感じるぜ……。俺達、誘導されていないか?)」

「施設である以上、人はいるのでしょうけれど……少々、人気が無さすぎるわね」

「ああ。そろそろ準備しとくか」

「ええ」

 龍野は漆黒の鎧騎士と化し、マシンガンを召喚する。

「人が少ねえなら、誤射の心配もそうそうねえな」

「ええ。けれど、弾丸の貫通力は非常に高いから……それだけは、気を付けて」

「ああ。それじゃ、いつものようにサポートしてくれ」

「わかったわ」

 ヴァイスは魔力で飛翔し、手近な高所に着地した。

(ここからおよそ200mに、市役所と思われる建物があるわね……。調査のために、出来れば防衛したいわ。もっとも、“調査”というのは、ほぼ建前なのですけれど)


 そんなヴァイスの思惑を知らない龍野は、銃を構えながら慎重に歩を進める。

(集中しろ、須王龍野……足音が聞こえるはずだ)

 そう。

 先ほどから、わずかながらズシンズシンという足音が響いているのだ。

「今の俺からみて、およそ70m……遠からずかち合うな」

 龍野は足音のする方向に、注意しながら走って向かった。

「そこか……(やっぱりな。誘われてやがる。ただの機械……いや、機械だからこそ、演算やその実行が出来るってワケか。だが、生憎あいにくこっちは、完全アウェーな状況にはとっくに慣れてるんだ)」

 建造物の角から少しだけ顔を出し、黄金の物体を確認する。

(お前か!)

 龍野はすぐさまマシンガンを向け、引き金を絞るように引く。

 12.7mmの弾丸が乱射され、装甲を削った。

「…………」

 黄金の物体――いや、サイボーグは、ぎこちない動きでゆっくりと振り向いた。

(鈍重な機体だな。最初に出くわしたと同じ……パワー型だろう。武器や特殊な攻撃スペシャルに、注意しなくちゃな……)

 龍野は反動をコントロールしつつ、振り向くまでに全弾を撃ち終えた。

「おまけだ!」

 トドメと言わんばかりに、ロケットグレネードも発射する。

 だが、黄金色の装甲には、ほとんど通用していなかった。完全に無効、とまでは行かなくても、戦闘行動には支障が無さそうであった。

『ヴァイス、マシンガンとグレネードの弾倉を交換する。黄金野郎の動きをモニターしてくれ』

『了解よ』

 龍野はマシンガンを立てたのち、慣れた手つきで弾倉を交換する。

 わずか8秒で、マシンガンとグレネードの弾倉を交換し終えた。

『終わったぜ』

 発射状態を整えて、マシンガンを構えなおす。

 そのとき、黄金のサイボーグが左腕を出した。

『龍野君、嫌な予感がするわ……。空中退避!』

『あいよ!』

 龍野は魔力を全開にし、飛翔した。あっという間に、高度50m程度まで上昇した。

 直後、ポンという音を立てて弾丸が発射された。

(射線から外れてんのにも関わらず、撃ってきただと……?)

 発射された弾丸から、煙がまき散らされた。

『龍野君、“強制排熱”を開始して』

『言われなくても』

 高圧の水蒸気に包まれた。蒸気がガスを押し返す。

『ヴァイス、今のところ安全だ。だが、近くの地面が変色してやがる。やっぱりあのガス、何か毒があるぜ』

『ええ、次からは撃たせないようにしなくてはね。とはいえ、この状態で接近出来るわけでもないから……』

 ヴァイスは一度言葉を切り、龍野の意識を引き付けた。

『眼前の敵を完全排除する許可を与えるわ。、ね』

『あいよ』

 龍野はマシンガンを異空間に飛ばし、大剣を召喚する。

 そして狙いを定め――

「サヨナラだ」


 高出力のビームを放ち、黄金のサイボーグを貫通した。


 態勢を立て直す隙を与えず、数発立て続けに撃ち込む。

 黄金のサイボーグは、爆散すらせずにその姿を消した。

『終わったぜ』

 龍野は大剣を消し、マシンガンを召喚した。

『ええ。けれど、警察署付近に反応を探知したわ。2機はいるわね』

『了解、排除するぜ。武装はマシンガンに持ち替えた』

『わかったわ。引き続き、排除をお願いするわね』

 龍野は戦闘位置から一旦距離を取り、手近な建物の屋上に着地した。



現在の龍野の撃破スコア……7体(7,000点)


騎士突撃槍銃アサルト・マシンガンの残弾(途中経過)


     マシンガン……200 + 200×4 発


     グレネード…… 3 + 3×4 発

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