vs"N"
2番エリアに向かった二人。
「陰気な街だぜ……」
「本当ね。生気が吸い取られてしまうわ」
「早く調査を終えて、オサラバしたいぜ」
「ええ」
二人は、街を歩くサラリーマン風の男を見かけた。
「おい、彼……」
「すごい形相ね。もしもし、大丈夫ですか……きゃっ!?」
すると男は、ヴァイスを突き飛ばしてこう答えた。
「急がなくては……早く買い物を……」
「おい、だからって突き飛ばすこたぁねえだろ! 大丈夫か、ヴァイス!?」
「ええ、私は大丈夫……」
「まったく、街といい人といい、どうなってやがる……!」
龍野が吐き捨て、調査を続行しようとした矢先。
炸裂音が、二人の耳に響いた。
「おい、この辺に花火工場とかってあったか?」
「いえ、そうは見えないわね。それに音の響いた方向。まさか……」
「調べるぜ……おっと」
龍野が床を見る。そこには、既に血だまりらしきものが出来ていた。
「こいつぁ、耐性の無い人間にはきついだろうな……」
即座に鎧騎士と化すと、武器を持たぬままに足を進める。
『龍野君』
ヴァイスが念話で、話しかけてきた。
『何だ?』
『そろそろ、嫌な予感がするの。このビルの屋上に行かせてもらっても、いい?』
『ああ、行ってこい。それよりも、わかるんだな、ヴァイス。俺も、そんな予感がするぜ』
『ええ。心して』
ヴァイスは魔法陣を展開すると、垂直飛翔でビルの屋上まであっという間に昇った。
「それじゃ、ヴァイスも逃がしたことだから……ご対面だ、爆殺魔!」
龍野が勢いよく駆け寄る。
そこには、骸骨頭をした深緑の機体がいた。
(こいつも、さっきの巨大甲冑の仲間か!?)
龍野が逡巡している間に、骸骨頭はサブマシンガンを連射してくる。
「へっ、効くかよ!」
だが、龍野の障壁の敵ではない。
しかし、打ち込んだ弾頭が(弾かれてあらぬ場所にあるとはいえ)炸裂した。
「おいおい……変な弾丸ぶっ放してんじゃねえよ!」
龍野は距離を詰め、腕部と脚部のブレードで着実に斬撃を食らわせる。
さすがにひるんだのか、骸骨頭は逃げだした。
「待てよ……! クソッ、
龍野は魔力を噴射し始め、推力を得て骸骨頭を追うことに決めた。開けた道に出る。
『龍野君、高度を取りなさい!』
そこに、ヴァイスからの連絡が入った。
『わかったぜ、ヴァイス』
すぐさま飛翔し、50m程の高度を稼ぐ。
すると、大型のトラックが通り抜けた。
『なっ!?』
『わかったでしょ、龍野君? 無駄に障壁を使うことになるわよ』
『わかったぜ。まったく、面倒だな……!』
龍野は骸骨頭に狙いを定め、ビームを放つ。だが、なかなか命中しない。
『狙いづれえ……!』
その時、ビームの通り過ぎた空間が爆発した。
「!?」
『気を付けなさい、龍野君。熱で爆発する物質が散布されている可能性があるわ』
『ッ……わかった!』
ヴァイスからの警告を受け取りつつ、龍野は追跡を続ける。
『一旦高度を落とす!(下手に撃てねえ。民間人を巻き込んじまう状況だからな……)』
龍野は進行方向と同方向に進むトラックに飛び乗り、忍者よろしく飛び移るのを繰り返して距離を詰める。魔力の節約を狙ったものだ。
やがて、骸骨頭と龍野は物流倉庫に到着した。同時に、骸骨頭がサブマシンガンを乱射し始める。
「何してやがる……! 皆さん、逃げてくださいッ!」
龍野が急いで拡声機能を使用し、避難を呼びかける。
だが遅かった。発射された弾丸が炸裂し始め、無秩序に周囲を破壊し始めた。
「てめぇ……! いい加減に、しやがれぇえええええッ!」
龍野が怒りに任せ、軌道を直線的にしてしまう。
骸骨頭はその隙を見逃さず、口を開いた。
「おらぁあああああああッ!」
龍野は仕掛けに気づかず、突進を続ける。
ドンッ、という発射音が響いた。
だが、障壁で弾かれる。
「効くかっ!」
『龍野君、“強制排熱”しなさい!』
龍野がトドメの一撃を放とうとした途端、ヴァイスからの忠告が入った。
『“強制排熱”を続けながら距離を取って! 早く!』
龍野は攻撃を強引に中断し、強制排熱を開始した。
同時に足から魔法陣を展開し、距離も開き始める。
龍野から、高温高圧の水蒸気が放たれた。
『後何秒続くかしら?』
『8秒が限界だな』
『それじゃあ、赤いビルの屋上まで逃げて!』
『了解!』
龍野は鎧から水蒸気を噴き出しながら、骸骨頭から距離を取る。
やがて、骸骨頭が火花を出した。
同時に、半径100m程度の爆風の半球が生まれた。遅れて、火柱が何本も発生した。
『おいおい……! 何だよ、あれ……!?』
『逃げていなければ、巻き込まれていたわね。それに“強制排熱”を忘れていたら、ここまで来ていても体が
『ありがとよ……!』
『爆発が終わったわ。今よ龍野君!』
『ああ!』
龍野が魔力を全開にして、疾駆した。
「年貢の納め時だ……!」
そして、大上段から骸骨頭を両断する。
勢いを殺す為に滑走する龍野の背後で、骸骨頭が爆発した。
*
二分後。
「終わったな。次のエリアに行くか?」
「ええ。私もそうしたいわ」
一部が壊滅的な惨状を迎えた2番エリアを尻目に、龍野達は次のエリアにつながる橋の前に到着した。
今回の戦闘における犠牲者
ブラック社員…… 453人(1,359点)
トラック運転手……1,018人(7,126点)
他サイボーグ…… 0体(0点)
合計……1,471人(8,485点)
現在の龍野の撃破スコア……2体(2,000点)
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