本編(状況に応じて説明文を挟む可能性あり)

vs"K"

 橋が崩落してから30分後。

 1番エリアに向かった龍野達は、早速異常を察知した。

『ヴァイス』

『何かしら?』


『ちょっと……揺れてないか? 地震にしてはおかしいペースで』


 そう。

 さっきから、辺り一帯がズシンズシンと揺れているのを、龍野は察知していたのだ。

『ええ。近くのショッピングセンター屋上で、様子を確かめましょうか』

 ヴァイスの提案で、二人は素早くショッピングセンターの屋上に向かった。


「何だ、あれ……!?」

 龍野が真っ先に見たもの。


 それは、黄金色の巨大甲冑だった。


「今のところ、ただ歩いているだけのようだが……」

「そんな悠長な事を言っている場合ではないわ、龍野君」

 ヴァイスの冷ややかな声が、龍野の思考を明瞭めいりょうな状態に引き戻した。


「あの方角に進み続けた場合……あと30秒で、アミューズメント施設と隣接する海浜公園に侵入するわよ。それに、あの甲冑が通り過ぎた後の地面……


 そう。

 あの巨体で踏みつぶされれば、たとえ魔術師といえどただではすまないであろう。

 ましてや、何の力も持たぬ民間人など。

「放っておけるか……!」

「その意気よ、龍野君。魔術を行使する許可は、もう与えたわ」

「ありがとよ……!」

 龍野は漆黒の鎧騎士に変身し、迎撃を開始した。

『それじゃあ、私はサポートに回るわ』

『頼むぜ!』

 ヴァイスはヴァイスで、限界まで高い位置にある足場(散骨場の煙突)まで飛翔し、そして確保した。


「しかしあの野郎……どことなく俺の鎧と、デザインが似てやがる」

 龍野はぼやきながら、背中より展開した魔法陣から魔力を噴射しつつ、攻撃態勢に移っていた。

 大剣を召喚し、剣先を巨大甲冑に向ける。

「あの牛久大仏め……せめて注意は、引かなきゃな!」

 そして剣先から、凝集した魔力を解き放った。

 ビームは甲冑の表面装甲に命中する。

「チッ、ダメだ……これだけじゃ、全然効いてねえ」

 龍野が射撃を中止する。

 言葉通り、表面の装甲が少々焦げてくぼんだ程度だった。甲冑は行動に関し、何の支障もきたしていない。

 だが、視線が龍野を捉えた。

「よし! ひとまず意識をこっちに向けた……!」

 安堵する龍野。

(けど、様子が妙だな……?)

「全速力で左に跳躍して、龍野君!」

「ヴァイス!?」

 龍野がヴァイスの指示に従い、緊急回避を行う。


 刹那、龍野のいたエリア一体が更地と化した。


「ど……どういう、ことだよ……!?」

 恐る恐る、地面を見る龍野。

 視界には、がぽつぽつと見えた。

「クソ……野郎がぁああああああッ!」

 龍野が激情に駆られる。同時に魔力が活性化し、オレンジ色のオーラが龍野を包んだ。

「龍野君、聞いて!」

 ヴァイスからの指示だ。

「甲冑の弱点をこちらで発見したわ。頭部を集中攻撃して!」

「わかった!」

 龍野は魔力全開で飛翔し、つかず離れずの距離を保ちながらレーザーを乱射する。

「網目状の箇所を狙って! 簡単に突破できるはずよ!」

「あいよ!」

 だが、甲冑もただではやられない。

 龍野との距離を詰め、フックやストレートの格闘攻撃を行ってくる。

「クソッ!」

 圧倒的な巨体から繰り出される攻撃は、魔術師の障壁をもってしても耐えられるかわからない。攻撃がそこまで速くないのが幸いだ。

「なめんじゃ、ねぇえええええええッ!」

 龍野は攻撃を回避しながらも、着実に装甲を削り続ける。

「これでっ、どうだぁああああああッ!」

 ビームを放ちながら、思いっきり剣を振るう。


 即席の巨大ブレードは、数々の攻撃で脆くなっていた甲冑の頭を、音も立てずに斬り落とした。


 頭部が地面に着地すると同時に、ズシンという音が辺り一帯に響いた。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「龍野君、まだ終わっていないわ」

「何……ッ!」

 首を落とされてもなお、甲冑は動いていた。

 動きの鈍くなった龍野を狙い、必殺のストレートを放つ。

「やられて、たまるかよ……ッ!」

 だが、龍野は攻撃を受け流す事に専念。

 果たして――発生した気流が龍野の体勢を大きく崩すも、致命傷は負わずに済んだ。

「中に人間がいるわ! 頭部から侵入できるはずだから、トドメを刺して!」

 程なくして、ヴァイスからの指示が飛んでくる。

「わかった……って、こんなところにいたのか!」

 人間でいう脊髄の部分、それもかなり首に近い箇所に、「操縦者」は存在していた。

「ふざけんなよ……てめぇ!」

 龍野はよろった手甲で一発殴り飛ばす。だが、「操縦者」は衝撃で体を震わせる以外、何の反応も示さない。

「何人、死んだと思ってんだ……!」

 龍野は激情に任せ、剣を「操縦者」の心臓に突き立てる。

「あの世で、詫びてきやがれぇえええええッ!」

 そして、トドメのビームを、先程の数倍の威力で放った。


     *


 三分後。

 バランスを崩し、うつぶせに倒れた首無しの甲冑を尻目に、龍野は1番エリアを後にしようとする。

「待ちなさいな、龍野君」

 ヴァイスが後を追ってきた。

「主を置いてけぼりにするなんて。騎士失格よ、龍野君」

「済まねえな。けれど、一体何人死んだんだか……ああ、クソッ!」

「これは更なる調査が必要ね。隣のエリアは、埋め立て地(6番エリア)とビル群(2番エリア)……どちらに進むべきかしら?」

「ビル群だろ。見たところ、埋め立て地に人はいねえようだしな」

「それもそうね」

 二人はエリアの境界である橋の手前で、飛翔状態を解除した。




今回の戦闘における犠牲者


   観光客……2,978人(8,934点)


  カップル…… 444人(2,220点)※男女セットの犠牲者である。

※内訳  男…… 222人

     女…… 222人


会社保険社員…… 503人(2,515点)


   従業員……1,873人(1,873点)


他サイボーグ…… 0体(0点)


    合計……5,798人(15,542点)



現在の龍野の撃破スコア……1体(1,000点)



作者による追伸


 有原です。

 弱点を捏造してしまいましたが、これは企画において許可される行為なのでしょうか……?

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