替え玉作戦
くさかみのる
第1話
己の姿を映すほどに磨き上げられた大理石の神殿。その優美な床に散りばめられたのは肉片だった。
取り囲む神官たちはみな一様に青ざめ、血の気を失った顔で互いを見やっている。
本当ならば、この場に現れるはずは第一王子の代用品。異世界から招かれる人間。しかしそれは姿を現したと思うがいなや、腹を膨らませ爆死したのだ。
マルティナ王国第一王子、ルーファスが暗殺されてから3日。秘密裏に替え玉を用意せよとの命により召還の儀を行っていたのだが、失敗に終わった。
そもそも異世界から人間を喚び起こすのはイニシエの禁術。高位とはいえ寄せ集めの神官たちには荷が重すぎた。
「我らは滅ぶ定めか」
儀式を見守っていた初老の男が、しわがれた声で呟く。
隣国との戦争を回避すべく設けられた政略結婚。ルーファスはその任を任されていたのに。
どのような理由があれ、婚姻が結ばれなければ再び国は戦火へと舞い戻ることだろう。
初老の男が残念だと頭を下げる。
そこへ駆け寄る足音が一つ。
「大神官さま、ご報告です。騎士団の見習いに、王子殿下によく似た容貌の少年がいると!」
替え玉作戦 くさかみのる @kusaka_gg
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