第12話なぞの生き物現る

 間一髪で飛び降りたトン子はドボンと大きな音を立てて川に落ちた。

なんとか地面にはいあがったが、たちまち野犬に囲まれて

食われそうになってしまった。

 今にもとびかかろうとして、じりじりと近づいてくる犬たちを

目の前に、トン子は恐怖に固まってしまった。すると突然、

見たこともない大きな生き物がボヨンボヨンと飛び跳ねてきて、

犬たちをパンチとキックで蹴散らした。

「大丈夫ですか?おけがはありませんか?」

と紳士的な態度でムキムキな生き物はトン子にたずねた。

「いえ、幸いどこもけがしていません。先ほどは

 危ないところを助けていただきありがとうございました。

 ところであなたは大きなうさぎさんですか?」

とおそるおそるトン子が尋ねると、

「カンガルーだよ。」

とムキムキマンは答えた。

 なぜこんなところに日本にいるはずのない生き物である

カンガルーがいるのかという疑問がトン子の頭の中に浮かんできたが、

そこにカラスが飛んできたのでうやむやになってしまった。

「大変だ!ブーブ君がトン子ちゃんを助けに行こうとして

 ただ乗りした車が脱獄犯にジャックされて

 事故を起こして止まったあげく、運転手が人質になっているよ。」

とカラスが騒がしい声で報告した。

 自分の身の上と、ブーブとのなれそめなど、

これまでのいきさつをトン子はカンガルーに説明した。

「それは一大事だ!今すぐ助けに行こう。カラス君、

 道案内を頼んだぞ。」

というと、カンガルーはポケットにトン子を入れてすごい勢いで

ブーブたちのもとに向かうため、駆け出した。



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