第13話大団円

  さて、イノシシのブーブの方はどうなったかというと、

「悪党め!許さないぞ!」

と叫んで凶悪犯に向かって突進した。体当たりを食わせると、

男は前につんのめって倒れ、その衝撃で意識が戻った人質が逃げ出した。

「この毛深いブタ野郎!やりやがったな!」

とこめかみに青筋を立てて怒り狂った脱獄男は

ブーブを思い切り蹴とばした。

 痛みで身動きができなくなっているブーブに

大きな石を手にした脱獄犯が、

「生意気な毛深いブタめ!ぶっ殺してやる!」

と叫んで今にもブーブの脳天をぶち割ろうとしたとき、

さっそうと現れた巨大なカンガルーが

脱獄犯にストレートでパンチを浴びせた。

 ところが石頭で並外れた怪力の悪党は、

カンガルーの顔面に思い切りパンチを浴びせて

カンガルーはよろめいた。

「大変だ!スーパームキムキマンがやられてる!助けなきゃ!」

とブーブは加勢しようと、

「必殺!うんこ爆弾!」

と叫んで団子状に丸めた塊を、男の顔面に投げつけ、

見事に命中させた。一連の事件のショックでブーブは腹を下していたのだ。

「ぎゃあっ!臭い!おれはきれい好きなんだ!」

とわめいて男が錯乱したところをカンガルーが強烈キックを浴びせ、

一撃のもとに男は地面に倒れこんだ。

 すると、ようやく警官が2,3人現れて駆けつけ、男に手錠をかけると

「確保!」

と叫んだ。

「ずるくないか。警察官、今まで何してたんだ。」

とブーブは内心思った。

 ずぶぬれの若い男がよろめく足取りで現れると、

「お兄ちゃん!」

と叫んで少年のような妹は、泣きながら兄と抱き合ったのだった。

 同時に、トン子がカンガルーの袋から飛び出してきて、

ブーブのもとに駆け寄った。

「やっと会えたね!これからはずっと一緒に暮らそう!」

と種族を超えた愛で結ばれた2匹はひづめを取り合って喜び合った。

 兄と妹は救急車で運ばれていった。

 警官たちがムキムキマンのことを動物園から

逃げたカンガルーではないかと色めき立って、

捕獲して動物園に移送する相談をしているのが聞こえてきた。

「長居は無用だ。われわれは安全な場所へ身を隠そう。」

とつぶやくと、イノシシと豚のカップルをおなかの袋に入れて、

カンガルーのムキムキマンはかき消すように姿を消した。

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