第10話トン子

 トン子は荷台から逃げ出すと、

一緒に載せられていた豚のうち3匹と連れだって

 逃げだした。

 途中、何匹かの無気力な豚が路肩に寝そべっているのに出会った。

「ねえ、わたしたちと一緒に逃げましょうよ。」

とトン子は誘ったが、

「いや、おれたちはもうだめだ。生きることに疲れたんだ。

 放っておいてくれ。」

と言って彼らは動こうとしなかった。

「本人(豚)に逃げる意志がないんじゃ仕方ないよ。」

と連れの豚が言ったので、トン子もその場を離れざるをえなかった。

 やがて豚の捕獲に駆り出された警官が現れ、

網をもってものすごい勢いで追ってきた。

「早く早く!」と気ばかり焦るが、

今まで運動不足で足が弱っていて思うように走れない。

一緒にいた仲間はトン子を見捨てて走り去った。

「もうこうなったら飛び降りるしかないわ。」

と決死の覚悟を決めたトン子は最後の力を振り絞って

ブロック塀を乗り越え、3m下の地面に飛び降りた。

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