第9話救出

「どうしよう。助けたほうがいいのかな。でも人間怖いし。」

 しばらくの間ぐずぐずしていたが、ブーブは決然とした様子で

隠れていたこたつの中から這い出してきて

ミノムシ状態で身動きが取れない兄弟のもとに歩み寄り、

ブーブは縄をかみ切り始めた。兄貴は気絶していた。

「なんでここにイノシシがいるのだろう。」

と弟は驚いたが、口にさるぐつわをかまされているので

言葉にならない奇声を発してうめくだけであった。

「さあ、終わった。もう大丈夫ですよ。」

とブーブが言うと、弟が

「ありがとよ。」と言ってブーブのごわごわした毛をなでてやった。

「とんでもない。カップ麺を少しつまみ食いしてしまいすみません。」

とブーブが言うと、

「いいってことよ。」と弟は手を振ってみせた。

「あれ?この少年はなんで動物である僕の言葉が分かるのだろう。」

とブーブは不思議に思ったが、面倒くさいことは後回しにした。

「知らない男にいきなり駐車場で拉致られて、このありさまさ。」

「ふうん。人間は動物にだけ危害を加えるのだと思ってたけど、

 同じ人間もひどい目にあわせるんだね。」

とブーブはため息をついた。

「おい、兄貴。目を覚ませ!」と弟は兄を揺り起こした。

「あれ?どうなってるんだ?

 いきなり後ろから誰かに殴られたのは覚えてるけど。」

と兄は少しぼんやりしていた。

「ここのイノシシ君が助けてくれるまで縛られて転がされてたんだよ。

 この状況から脱出するにはどうすればいいか作戦を立てようぜ」

と弟がせかした。


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