第8話絶好のチャンス

「次にお伝えするのは、高速道路でトラックが横転して積み荷の豚が

 道路に逃げ出したというニュースです。」

というラジオアナウンサーの声に、ブーブは耳をそばだてた。

「おい、豚がうじゃうじゃいるってよ。一匹くらいもらっても

 ばれないんじゃないか。」と弟。

「よせよせ、危ないだろ。渋滞してるだろうから違う道を運転していくか。」

と兄が言うので、ブーブはトン子を救うチャンスが

あと一歩のところで遠のくのを感じてがっかりした。

「この辺で車をとめて仮眠取りたいな。疲れた。」

というと、兄は大型商業施設の駐車場に軽トラックをとめた。

「おれ、トイレに行きたくなっちまった。」と弟がいうと、

「おれも。ついでに食料を買い出しに行こうか。」

と兄も一緒に出て行った。

 ブーブは一人で高速に向かってトン子を救いに行こうか迷っていた。

手遅れになる前に行かなければならないが、

イノシシである自分の姿は目立ち過ぎてクマの二の舞になりかねない。

 じっと考え込んでいたが、ぐるぐるまきに縛られた2人の兄弟が

荷台に放り込まれたあげく、車が急に動き出したのでブーブは仰天した。

「一体どうなってるんだ、今運転してるのは誰なんだ。」

とブーブはおろおろするばかりだった。



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