第7話昼逃げ兄弟

 やがて車が勢いよく走りだした。あまり飛ばすので荷台のブーブは

ほかの荷物と一緒に揺れまくり、

あちこちに体をぶつけて生きた心地がしなかった。

「おい、スピード違反で捕まったらどうすんだよ。」

と助手席の弟があきれ顔で兄に忠告した。運転席の兄は不機嫌だった。

「うるせえな、そういうてめえは高校生の分際でくわえたばこ

 じゃねえか。臭くてやってられねえよ。

 早く消さないと途中で降ろすぞ。」

 どやされた弟は窓からタバコをポイ捨てしてしまった。

 その後しばらく何事もなく走っていたが、ブーブは退屈した上に

腹をすかして荷物をごそごそあさった。すると、トン子そっくりな

かわいらしい豚の貯金箱を見つけた。

「やあ、君はかわいらしい子豚ちゃんだね」

と話しかけ、ひんやりとした体を抱きかかえた。

 カップめんを見つけたブーブがかわいたままバリバリ食べていると 

運転席で聞いているラジオのニュースがブーブに聞こえてきた。

「今日午前、○○県××市の公園でクマが暴れて駆けつけた

 警官隊に射殺されるという事件が起こりました。」

というアナウンサーの野太い声にブーブはぎくりとした。

「・・・なお、現場からイノシシ一匹も警官に

 怪我を負わせて逃走しており、警察で行方を追っています。」

 自分はお尋ね者なのだと強く自覚したブーブなのだった。

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