遅れて来た希望


 ナイトメアヘルと融合したハオリさんは圧倒的な力で私とエレナさんを攻撃してくる。

 そして、私は必死にハオリさんの攻撃を防ぎ、時には避けたりしているため、ハオリさんの初撃を受けて吹っ飛ばされたエレナさんの安否を確認できない。


「余所見してる暇なんてあるの?」

「くっ——!」


 エレナさんの安否確認よりも、まずは目の前のハオリさんの攻撃を防ぐことに集中しなければ。


 もし、ここで私がエレナさんと同じように吹き飛ばされれば確実にどちらか一人の命はない。

 何とかエレナさんが復帰するまで、私がこの場を耐えきるしかない。


 しかし、耐えきると言っても限界がある。

 私のスタミナが切れれば、結局私達が助かる可能性はなくなってしまう。


 ハオリさんはさっきからとても激しい動きをしているが、スタミナがなくなってきている気配がない。

 恐らく、ナイトメアヘルと融合したことによって身体能力の他にも体の大部分が強化されているからだ。


「ほらほらほら!!いつまで防げるかな!?」

「———」


 ハオリさんの攻撃手段は素手で殴ると蹴りの格闘技のみだが、その攻撃速度はそこらの冒険者達では到底出せないほどの速さだ。

 あのエレナさんさえもが反応できなかったのだ。


 私が今ハオリさんの攻撃を見切ることが出来ているのは、目を強化スキルで強化することによって動体視力を向上させているからだ。

 だが、それでも辛うじて見切っているので、いずれハオリさんの攻撃をまともに受けてしまうのも時間の問題。


「チッ……いい加減に……」

「——っ!」


 ハオリさんが次の攻撃に入ろうとしたので、私は即座に回避する構えをとるが、運悪く足が瓦礫につまづいてしまった。


 ——シロウさんの不運が、まさか私にも影響を及ぼすなんて……!!


 ここまでシロウさんの不運を呪ったことは無い。

 今までは、シロウさん自信にのみ影響があったのに、何故今になって私に影響を及ぼしたのかはわからない。

 ただわかること、それは……。


「フッ、終わりだぁぁ!!」

「しまっ——」


 私は目をとじて重症覚悟で腕をクロスにして防御した。


 ——おかしい……衝撃が来ない。


 ハオリさんの攻撃速度なら、今頃私はハオリさんの攻撃によって吹っ飛ばされているか地面に叩きつけられているだろう。

 だが、そうなる気配は一向にない。

 恐る恐る目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。


「お前は……!?」

「……やらせねぇよ」


 そこにはハオリさんの拳を私がよく知る男性が持つ剣によって受け止められていた。

 いつもとは違う姿をして。


「その姿は……」

「話は後だ」


 確かに、今はそんなことを聞いている暇なんてない。

 なら、この戦いが終わった後にじっくりと聞かせてもらうことにしよう。


「ハッ!」

「ぐっ!?」


 受け止めていた拳を弾き、剣を持っていない方の手で何かをしたと思えばハオリさんはその場にはおらず、向こうの方で物凄い音がした。


 ——あの一瞬でハオリさんを吹き飛ばした!?


 私の知る限りでは、こんな力は持っていなかった。

 いったい悪夢の世界で何があったというのか?


「まるで、俺達が初めて会った時みたいだな」

「立場は逆ですけどね」

「そうだな」


 昔は私の方が魔力も多くて、龍属性も持っていて強いような気がしていたけれど、今では私よりもずっと向こう側にいる。


「……おはよう」

「大寝坊ですよ、シロウさん」


 今、この瞬間に私達の希望とも言える人が悪夢の世界から無事に機関を果たした。


「ちょっとちょっと、私のことも忘れないでよね」


 そこに、傷だらけであるものの無事に生存しているエレナさんが来た。


「エレナさん!無事だったんですね」

「よし、全員揃ったな」


 ここにシロウさん、エレナさん、そして私の全員がここに揃った。

 全員少しは消耗しているものの、戦闘に支障をきたす程ではない。


「感動の再会は終わったかい?」

「ああ、お前が律儀に待っていてくれたお陰でな」

「いえいえ」


 シロウさんに吹き飛ばされたハオリさんが戻って来た。


「それじゃあ、戦いの再開といこうじゃないか」

「そうだな。それじゃあ、少々相手は違うがリベンジマッチといこうぜ!!」


 お互いに体勢が立て直ったところで、再びハオリさんとの戦闘が開始された。

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