決着?
「こ、これは……!」
「………!」
俺達は目の前で起きていることに驚きを隠せなかった。
何故ならば……。
シュウゥゥゥ……。
「ヴゥ………ヴ……!?」
あらゆる物理攻撃や魔法すら効かなかったナイトメアヘルが赤い魔石の拘束攻撃が命中した瞬間にスライム状だったナイトメアヘルが徐々に黒色の塊に変わっていく。
「……まさか、ここまで効果があるなんてな」
「でも、塊になったらどうやって魔臓を破壊するの?」
「それもそうだな……」
奴が塊になったところでアイツは動けないし俺らも手出しができない。
恐らく、塊になったことで物理攻撃は効くようにはなったと思うがそんなにも簡単にあの塊を斬ることは出来ないだろう。
そう俺らが思っていると塊になって動けなくなったはずのナイトメアヘルが自身の体から何かを飛ばしてきた。
「うわっ!?」
「おっと!」
「……!」
俺達はナイトメアヘルが飛ばして来た何かを回避した。
その何かの正体は、空中を素早く動き回ってビームを撃ってくるものだった。
「こ、これはファン〇ル!?」
「ふぁ、ふぁん……?」
「そんなことを言ってる暇があったら回避に専念してください!」
ナイトメアヘルによるファ〇ネル攻撃をひたすら回避する。
回避しているうちにわかったことは、このファン〇ルが撃ってくるビームの一発一発の威力がかなり高い。掠っただけでもダメージは大きいだろう。
「あれは!?」
「どうした!?」
「皆さん、今すぐ全力で横に回避してください!」
「「りょ、了解!」」
俺とエレナはリアラの言われた通りに全力で俺は右に、エレナは左に飛ぶ。
そして、その瞬間にファン〇ルが撃ってくるレーザーよりも特大のレーザーがナイトメアヘルの口?の辺りから発射される。
そして、特大のレーザーに当たった場所は跡形もなく
「おいおいおいおい、拘束したら攻撃は通るようになったかもしれないが、相手の攻撃がより協力になっているのだが?」
「そ、そんなこと私に言われてもわかりませんよ!」
あまりのレーザーの威力に冷静さを取り乱す俺とリアラ。
こんな攻撃に当たったら怪我どころか体ごと吹き飛んでしまう。
「………シロウ、リアさん、見えた?」
「ん?何がだ?」
「ナイトメアヘルの魔臓があの特大レーザーを撃つ発射口の奥にあったよ」
「………は?」
エレナの言うには、さっきの特大レーザーを撃った口の奥に魔臓があったらしい。
魔臓を見つけたのならあとはそれを破壊すればいいだけだ。
幸いにも、魔物の魔臓は全てにおいて柔らかいという共通点がある。それはナイトメアヘルの魔臓も例外ではないだろう。
「でも、ナイトメアヘルの口は例の特大レーザーを撃つ時にしか開かないようですが……」
「……そのタイミングを狙うしかないってことだな」
ナイトメアヘルの攻撃をひたすら回避して、奴がレーザーを撃つ瞬間に一気に接近して魔臓を叩く。
成功すればナイトメアヘルを撃破することが出来るが、失敗すれば待っているのは死という結末だ。
「リアラはそもそも接近戦は苦手だから除外」
「だとすると、私かシロウのどちらかってことだよね?」
………。出来れば俊敏が俺とリアラよりも高いエレナが言った方がいいのだろうがエレナは体力がない。
奴が口を開くまで体力が持つかどうか……。
もしも、失敗すればエレナは体力切れで身動きが取れない。
それならどちらが行くかは決まっている。
「俺が行く。エレナは万が一失敗した時のために体力を温存しといてくれ」
「!!……わかった」
少しは反論されるかと思ったが以外にも言うことを聞いてくれた。
話し合いが終わると同時にナイトメアヘルの攻撃が再開される。
「ハッ、律儀に待ってくれてどうも!!」
ナイトメアヘルのファ〇ネル攻撃がくる。
それを体力温存のためにリアラが魔法によるシールドを貼る。
リアラが時間を稼いでいる間に俺は準備をする。
「創造」
消費魔力は100。切れ味と鋭さを強くする。一撃で仕留められるようにいつも以上に強化をする。
——失敗するなんて気は元から無い。
出来るか出来ないかじゃない……やるんだ!!
「ナイトメアヘルの口が開きました!!」
「わかってる!!」
攻撃が止み、口を開けた瞬間にリアラのシールドから抜け出して接近する。
そして、俺の持っている剣で魔臓を貫通する勢いで突きに行く。
「よし、このまm……うわっ!」
「どうした!?」
突然エレナの悲鳴が聞え後ろを振り返る。
そこで俺が見た光景はさっきまで完全に止んでいた攻撃がリアラ達を動かさないと言わんばかりの集中砲火をしていた。
——まさか、こいつは俺たちの話の内容を理解して……!!
そうだとするとまずい!
そう思い、俺がナイトメアヘルの方を見たが目の前には特大のレーザーが迫っていた。
「……ちくしょう……」
特大のレーザーは俺に迫り来る。
もう何をしても手遅れだろう。リアラとエレナは集中砲火により身動きが取れない。
作戦は……失敗した……。
「………だ」
作戦が失敗した?俺に待っているのは死の結末?
それがどうした、そんなものは全てぶち壊せ。
そんな最悪の結末はぶった斬れ。丁度無意識に高速思考が発動している。このピンチを突破する方法なんてものはいくらでもある。
「まだだぁぁ!!」
俺は魔臓を突き刺すつもりだった剣をナイトメアヘルの魔臓に向かって投げる。
俺が創造する剣に斬れないものはない。常に俺が作る剣は最強だ。
普通に斬れないのなら普通じゃない斬り方をすればいい。
「創造!」
左手になるべく硬く、そして、剣先を平にする。
誰もがこの剣を見た時にこう思うだろう。
——あれは剣ではない、剣に見せかけたハンマーだ。
「そんなレーザーは、この俺が斬り裂いてやる!」
そして、持っているハンマー型の剣でさっき投げた剣を後ろから思いっきり叩いて押し込む。
ハンマーで叩かれた切れ味と鋭さが抜群の剣はナイトメアヘルの特大レーザーを斬り裂きながら真っ直ぐナイトメアヘルの魔臓に向かって行く。
そして……。
グサッ……
「ヴゥゥゥゥ!!??」
ナイトメアヘルの口の中に剣が突き刺さる。それはつまり、ナイトメアヘルの魔臓に剣が突き刺さることを意味する。
魔臓を失ったナイトメアヘルはスライム状になり消えていく。
拘束相手を失った赤い魔石は力を失い、ただの赤い石と成り果てる。
「やった……のか?」
「見てわからないの?倒したんだよ!!」
ナイトメアヘルが消え去った所には魔臓に突き刺さったままの剣がある。
魔臓は生気を完全に失っていた。
「取り敢えず、その魔臓回収したら入口に戻るぞ」
「了解です」
そして、俺とリアラは魔臓を回収しに向かう。
それにしても、様子が変だ。確かあの住民の話通りならナイトメアヘルを倒せば皆は目が覚めると言っていた。
なら……。
——何故まだ
「まさか……!」
「どうかしたのですか?」
「気をt……」
ドォォォンッッッ!!
俺がリアラとエレナにナイトメアヘルがまだ生きている可能性を伝えようとしたが、突然街の床から黒いドロドロしたものが飛び出して川のように俺とリアラに目掛けて流れてきた。
そのドロドロしたものはナイトメアヘルのスライム状の体と瓜二つだった。
——クソっ、間に合わない!!
せめて、リアラだけは助ける!!
「すまないリアラ」
「え?……キャッ!」
俺はリアラを両手で持ち上げ、ナイトメアヘルのドロドロが当たらない場所に投げる。
「へっ、日々の筋トレと素振りが役に立った……!」
「シ、シロウさん!!」
「リアラ……後は頼んだ」
その言葉を最後に俺はナイトメアヘルのドロドロに呑み込まれ、意識を失った。
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