悪夢との遭遇
今、俺達はゴーストタウンと化したデモービルを徘徊している。
ただ徘徊しているのではなく、ちゃんとした理由がある。それは、目的の魔物であるナイトメアヘルを討伐するためだ。
街の外で出会った女の人が言うには、ナイトメアヘルは常にデモービルを徘徊しているらしく、生命体を見つけると姿を現すらしい。
「そして、この魔石で動きを封じて倒す……か」
今俺が持っているこの赤い魔石は拘束の能力があるようでナイトメアヘルの動きを封じた後に魔物の核、つまり、魔臓を破壊するというのが今回の作戦だ。
ちなみに、赤い魔石は俺だけではなくリアラとエレナも一つずつ持っている。
「拘束する必要があるっていうのはどういうことなんでしょうか?」
「さあな。だが油断だけはするなよ?わざわざそれを俺達に渡したということは、拘束しないと倒せないくらいに強いってことだからな」
「わかってますって」
高速でもしないと倒せない魔物…ナイトメアヘル。
一体どんな魔物なんだ?この街の住民の殆どをダウンさせる程強いんだとしたら、そこらの雑魚と同じような姿ではないと思うが……。
俺がそんなことを考えているとリアラが何かに気付いた。
「……何か……嫌な感じがします」
「嫌な感じ?」
「はい……」
「皆!アレを見て!」
急にリアラの様子がおかしくなったと思えばエレナが暗闇の街の奥を指さして叫んだ。
そして、さした指の先には赤黒い色をした物体がいた。
「あれは……スライムか?」
「……確かにスライム状ではありますがあんな色をしたスライムは見たことがありません」
スライムといえば、某人気RPGゲームの序盤で出てくる見た目が可愛いくて愛されている敵だ。
しかし、今俺達が目にしているスライム(仮)は可愛らしさの欠片もない。
赤黒い色にドロドロとした体。しかも、体の大きさが俺の知ってるスライムの数十倍以上ある。
「じゃあ、こいつがナイトメアヘル…でいいのか?」
「はい、恐らくそうかと思います」
「まさか、正体がスライムだったとはね」
スライム状の魔物となると、物理攻撃は効かない。
ガルメにいた時にしたスライム討伐のクエストでは物理が効かないことを知らなかったので痛い目にあったものだ。
「リアラ!」
「わかってます!」
俺が声を掛ける前に魔法を放つために持っている杖を構えていた。
物理が効かないのなら魔法で対抗するしかない。
「燃やし尽くして、『インフェルノ』!!」
ナイトメアヘルを一撃で仕留める為にリアラは火属性の最上級魔法を放った。
やっぱり、全魔属性って便利だな。だって、実質火属性や水属性のような魔法系の属性を全て持っているようなものだしな。
そして、リアラが放ったインフェルノはナイトメアヘルに命中した……が、何か様子がおかしい。
「何故衝撃が来ない?」
リアラが放ったのは命中すれば爆風のような衝撃と煙が上がる筈なのに、何故かその現象が起こらない。
しかも、徐々にインフェルノが消えていく。
まさか……。
「魔法を吸収……いや、
暫くして、インフェルノが完全に消えた。
そして、インフェルノの全てを喰ったかと思った瞬間にナイトメアヘルがリアラと同等の魔力量でインフェルノを放ってきた。
「ッ……『アクアウォール』!」
迫り来るインフェルノにリアラが咄嗟に魔法で水の壁を作る。
「今の内に距離をとってください!」
「わ、わかった!」
俺達はリアラか出した水の壁で威力と範囲が狭まったインフェルノから距離をとる。
(流石は最上級魔法、水の壁で簡単に止められる筈がないか)
そして、インフェルノは街の建物に命中して、建物は炎に包まれた。
その後に俺達はさっきいた所に行って軽く作戦を立てる。
「まさか、こんなにも強い相手とはな……」
「はい。それと、さっきの魔法ですが、恐らくナイトメアヘルは相手の魔法を喰ってその喰った魔法と全く同じ、つまり、コピーをして私達に放ってきたんだと思います」
「物理攻撃も効かない、魔法による攻撃も効かないとなるとどう倒せばいいの?」
確かに、普通ならこの状況ではナイトメアヘルにダメージを与える攻撃手段が皆無だ。
だが、それは
「その為のこの魔石だろ」
「しかし、拘束したところでナイトメアヘルにダメージを与えられないという事に変わりはないですが……」
「……ま、その辺はなんとかなるだろ」
「………本当に大丈夫でしょうか……」
リアラとエレナの二人が不安になる中、俺はこの魔石の拘束効果がどこまでナイトメアヘルに通用するかを考えながらリアラとエレナと共に魔石をナイトメアヘルに向けて使った。
しかし、魔石の拘束効果は俺達の思っていた以上の効果を発揮したのだった。
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