目的


「まずは……何故この町なのかを話しましょう」


ディンの槍に刺されたままの姿勢でレナが話し始めた。せめて槍は抜いてやれよ……。


「私がこの町を襲った理由は貴方がこの町にいたからよ、

「………俺?」

「はい」


どういう事だ?何故俺がこの町にいることが襲う理由になる?それにどうして俺の名前を知っている?


「貴方、邪竜神教でどんな扱いになっているか知ってる?」

「いや、全く知らない」

「ま、そうでしょうね」


レジェスの町から邪龍神教と遭遇していないのでそういった情報は全くわからない。と言うか敵である邪龍神教の情報なんて知りたくもない。

いや、逆に敵の事を知るための情報は知らなくてはいけないじゃないか。


「『邪龍復活の為、殺すべき者』これが今の貴方への扱いよ」

「…えっと……つまり……」

「邪龍の器であるリア サクリドラスよりも創造スキルを持ったシロウ サクラギを狙ってきてる訳」

「はぁ!?」


邪龍復活の邪魔になる俺を先に狙って来たか。確かに、リアラを守っている俺を先に排除すればより確実にリアラを確保出来る。

……ん?ちょっと待て。


「何で邪龍神教の情報をお前が知っている?」


この情報は恐らく邪龍神教の信徒以外には知られていない情報だ。それを知っているということは、レナは邪龍神教の信徒、或いは邪龍神教に関わっている者という事だ。


「それは、私が邪龍神教に関する者であるから。質問は答えたから次いくわね」

「お、おい!」

「落ち着け、まずは奴の話を聞くのが先だ」


レナの正体について聞こうとするがディンがそれを止める。

そうだ、落ち着け俺。ディンの言う通り、今は本題であるこの町を襲った理由を聞くのが先だ。


「ああ、わかった」

「それじゃあ続きを話すけど、ここからが重要な話で貴方が聞きたい事も恐らく今から話す内容に答えがあるわ」


そう言ってからレナは話を再開した。


「私はこの町を襲った理由は邪龍神教に命令に従ったから。いえ、従わざるを得なかった」

「どういう意味だ?」

「私達翼竜族の生活に必須な燃料とも言える物質『エトル』が何故か最近になって採取が出来なくなって生活が苦しくなってしまった。そしてそれを狙ったかのように奴ら……邪龍神教の連中がやって来た。そして私達にこう言ったわ。『我ら邪龍神教に協力してくれればこの街の問題を解決してあげましょう』てね」


急な燃料不足とそれを狙ったかのような邪龍神教の訪問。そして、協力してくれれば燃料不足を解決してくれる条件付きの提案。どうも引っかかるな……。


「それを聞いて翼竜族の長はその提案を呑んだ。私達翼竜族はこのままだったら絶滅するのも時間の問題だったしね」

「……邪龍神教って良い噂を聞きませんが良い人達なんですか?」


邪龍神教の事を噂でしか知らないエレナがレナに質問する。そんな訳ない、と言いたいところだがここはレナに任せよう。


「そんな訳ない。だって、私達は生きる為に全力で協力しているのに肝心の燃料不足を奴らは放置している。時々エネルが採取出来たと思ってもその半分以上を邪龍神教の奴らに持っていかれる」

「なら、そんな提案を破ればいいじゃないですか!」


提案を破れば邪龍神教の呪縛からは逃れられるが破ったところを見逃してくれる奴らではないだろう。


「そうもいかない。奴らは提案を破ればこの街を滅ぼす、と言ってきている。いつもの私達ならそんなことをしようとする前に奴らを排除出来るけど、今は衰弱しているからたかが人間一人として倒すのが難しい。貴方達を相手にしている時も三割程度しか力を出せていないのよ?」

「あ、あれで三割?」

「やっぱり翼竜族って凄いな」


あの速さの攻撃で三割か。本気だったらいったいどれくらいの速さで攻撃してくるのだろうか……。


「でも、この町に来た時に命令なんて無視できたんじゃないですか?」


確かに、奴らはこの場所には来ていないという事は、レナはこの町では奴らの監視下に無いわけだ。何時でも逃げる事も密かに戦力を集めて奴らに対抗する事も出来た筈。


「私にも家族がいる。命令に逆らえば家族を皆殺しにされる。人質を取られては従わざるを得ない、という訳」


しばらく帰って来なかったら『逃げた』ことで家族が皆殺し。戦力を作れば『裏切り』で家族が……いや、その場合は翼竜族が皆殺しにされかねない。


「それじゃあ命令の内容は?」


ディンがレナに聞く。今まで話して来たのは大雑把な命令の内容なので詳しい命令内容をディンは知りたいようだ。


「命令の内容は『シロウ サクラギの抹殺及びリア サクリドラスの確保』よ」

「それとこの町を襲ったのにどういう関係がある?」

「それは——」


「喋り過ぎだ、翼竜族」

「「「「ッ!!」」」」


レナが話そうとすると背後から声が聞こえた。そしてその声は俺の聞き覚えのある声だった。


「お前は……!?」

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