神速VS神速


「お前は……!!」

「……また会ったな」


 声の正体は俺がレジェスで手も足も出なかったあの禍々しいオーラを纏った剣を持ったアイツだ。


「また戦うのなら今度は負けない!」

「……その目…どうやらあの時より少しは成長したらしいな。だが、今回の目的は貴様ではない」


 どういう事だ?今目の前には殺すべき俺と邪龍復活に必要なリアラがいる。

 それを差し置いてでも優先するべき目的だと……?


「さて、覚悟は出来ているな?」


 アイツはレナの方を見てそう言った。


「フン、勝負に負けた時にこうなる事は既にわかってたわよ……

「……貴様、何処でその名を……?」


 レナがアイツのことをレオンと言った。

 レオン……それがアイツの名前なのか?

 あまり知られていない名前なのかレオンはレナの発言に少々驚いている。


「……そんな事はどうでもいい、今から貴様は死ぬのだからな」

「……好きにしなさい」


 レナは今から自分は死ぬのだと思ったのか目を閉じる。

 それを確認したレオンは俺を斬った時と同じ構えをする。


「ちょっと待てよ」


 レオンがレナを斬りに行く寸前にレナから槍を抜き、前に出ながらディンが言った。


「……貴様に用はない、さっさと退け」

「お前のその剣……それは何だ?」

「……もう一度言ってやる、退け」

「質問に答えるまで退かねぇよ」


 「そうか」とレオンが一言。

 レオンのあの態度……ディンの質問に答える気は無いな。それどころかレナごと斬ろうとしている。


「……なら、貴様諸共殺すまで」

「やってみろよ」


 その瞬間、辺り一帯が静寂に包まれる。

 レオンとディンの二人がいつ動き出してもおかしくない雰囲気だ。

 そして、最初に動いたのはレオンだった。


「……貴様…!」

「フッ、その程度の攻撃が見えない俺ではないんでね」


 俺を切り裂いたあのレオンの居合切りをディンは両手に持っていた槍で防いだ。

 背後にいるレナには一切の傷をつけずに。


「ハッ!!」

「……チッ」


 レオンの攻撃を防いで反撃するディン。

 それに対してレオンもディンの攻撃を防いで反撃する。

 二人の攻撃速度は神速を超えている。辛うじて見えるのは二人の剣と槍がぶつかった時の火花と二人の残像。

 そして攻撃時の衝撃波や突風。


「は、速い」

「……エレナ、見えるか?」

「辛うじて二人の姿は確認出来るけど攻撃は全く見えない」


 俺の高速思考や起動スキルの速さで動体視力が良いエレナでも見えないのか……なんて速さだ。


「リアラ、エレナ。今の内にレナを回収するぞ」

「はい!」

「わかった!」


 ディンがレオンと戦っている内にレナを回収しに行く。

 レオンも今はレナを殺すことよりもディンの攻撃に対応することで精一杯の筈だ。


「貴方達は……」

「説明は後だ。早くここから離れるぞ!」

「……私は奴らの情報を話した。奴らに殺されるべき運命なのよ」

「ごちゃごちゃうるせえ!今レオンに殺されるか最後まで足掻いて翼竜族を救ってから殺されるかどっちがいいんだ!?」

「それは勿論、家族……そして、翼竜族を奴らの手から救いたいに決まっているじゃない!!」

「なら来いよ!運命がどうした?そんな運命変えばいいじゃねぇか!!」

「ッ!!」


 運命を変えることは難しい。

 だが、決して変えられないことは無い。

 運命がどうこう言うのはただ逃げているだけだ。


「……わかった」

「よし、それじゃあ走れ!」

「了解!」


 立ち上がったレナは俺達と共にディンとレ超人達オンから離れる。


「逃がすか!」

「お前の相手は俺だ!」

「邪魔をするな!!」


 二人の攻撃はより勢いを増していく。それはもはや誰も手がつけられない程に。


「それじゃあ、これで閉めとこうぜ」

「…この一撃で決める」


 二人は互いに距離を取り、必殺の一撃を打つ構えをする。

 その瞬間、有り得ないほどの殺気が二人から出てきた。

 そして、ほぼ同時に動き出す。


穿龍せんりゅう!!」

神速居合しんそくいあい!!」


 ディンは龍の如くレオンを突き刺しに、レオンは今までの日ではない速度でディンに接近する。

そして勝負は一瞬にして決まった。


「………」

「………チッ」


 二人共特に傷は付いていないが僅かにレオンの右肩から血が流れている。

 利き腕やられたレオンがこのまま戦っても勝算はないだろう。


「…今回は負けたが次は負けん。このまま戦っても勝算はないので今回は撤退させてもらう」

「待て!俺の質問に答えやがれ!!」

「俺を完全に戦闘不能までに追い込んだのなら教えてやる」


 そう言ってレオンは姿を消した。取り敢えず一難は去ったようだ。


「……さて、リアラ」

「はい?」

「この町の炎を消火するぞ」


 今まであまり意識していなかったがこの町はまだ燃えている。

 誰一人としてこの火を消そうとしないのだ。

 何やってんだよこの町の住民や冒険者達は。


「そうですね、そうしないと完全に解決したなんて言えませんからね」

「俺も手伝うぜ」

「私も手伝うよ」

「私がした事は私自身が片付けないとね」


 四人も協力してくれるんならそう時間は掛からないな。


「そういやレナ、いつその傷を回復させたんだ?」

「貴方のお仲間さんの回復魔法と私の治癒力のお陰よ。貴方のお仲間さんは魔法使いにおいて優秀ね」

「そうか」


 あの状態から普段通りに動けるようになるなんて、すごいという言葉意外出てこないな。


「リアラ、この四本の剣に水魔法を付与できるか?」

「わかりませんけど……やってみます」


 俺が軽く創造した四本の剣をリアラに渡す。

 もし俺の予想通りならこの三本の剣には水属性が付与される筈だ。


「やってみましたけど、特に変化はないですね」

「振ってみればわかるだろ」


 そう言って、ディンが三本の内の一本を手に取りそれを振った。するとが出てきた。


「……水が出たな」

「……水が出たね」

「…そう来たか」


 しかも何度振っても無くなる様子がない。無限に水が出てくる。


「それはそうとして、さっさと始めないか?」

「そ、そうだな」


 そして、全員が別々の場所に行き町の消火を開始した。


 新たな発見。それは、剣に魔法を付与すると魔法の属性のものが振ると出てくる、という事だ。

 内心そんな事を考えながら消火活動を続けた。

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