狂戦士と化した魔物 1
俺達は、狂戦士と化したゴブリンメイジを前にしている。
一体誰がこのような展開を想像できたであろうか。
「シロさん、ここは一旦撤退しませんか?」
「そうだよ!ここは一旦撤退してギルドに——」
「それは出来ない!!」
二人の撤退の提案を俺は反対する。
何故こんな姿になったのかも何故こんなに強くなったのかはわからないが、これだけは言える。
「こいつを今ここで倒さないとほかの人にも危害が及ぶ!」
もし、俺達が巧くあいつから逃げれたとしてもこの魔物の存在が消える筈がない。そうなると他の冒険書達に被害が出る。
「勝てるかどうか、じゃない。勝つんだ!」
「……そうですね。私達が倒しましょう!」
「今ここであのゴブリンメイジを止めよう!」
リアラとエレナはあの狂戦士と化したゴブリンメイジを倒すことに賛成してくれた。信じてたよ二人とも。
「そうと決まればさっさと倒すか。あのゴブリンメイジも準備満タンらしいからな」
俺達が話しをする前とは違って、何故かゴブリンメイジのサイズが二倍くらい大きくなっている。これも、あの謎の狂戦士化と何か関係してるのか?
「ギャァァァ!!」
そんなことを考えているとゴブリンメイジは俺達に向かって走ってきた。あと五秒もしない内にこちらに来ることが出来るくらい走るのが速い。
「「強化!!」」
エレナとリアラは強化スキルを使い脚力を強化。そして、ゴブリンメイジがこちらに来る前にその場から退避する。
それに対して俺は……
「ギギャァァ!」
「……高速思考…!」
高速思考を使ったことによって俺の周りの速さが遅くなる。そして、ゴブリンメイジが持っている斧を前に突き出しての突進をギリギリ回避する。
そして、俺がこの前ストックしておいた剣の内、鋭さを最大にして創造した刀を腰にある鞘から抜いてゴブリンメイジを切り裂く。
「グギッ!」
ゴブリンメイジの足を切り裂いた瞬間に高速思考を解除してゴブリンメイジから距離を離す。
「この剣を使ってあの程度の傷か……」
この刀は、俺の世界の妖刀村正や「切れ味の鋭さデュランダルに如くもの無し」と言われた聖剣デュランダルの切れ味には到底及ばないが、並大抵の魔物相手なら軽く一刀両断が出来るほどの切れ味はある筈。
しかし、あのゴブリンメイジの足はまだ繋がっている。と言うより、足の半分も切れていない。
これから導き出されることは……
「気を付けろ!このゴブリンメイジの体は硬化しているぞ!」
「「え!?」」
体が硬くなった。つまり、硬化しているのだ。
でないと、この刀に足を切られている筈だ。この刀でも切れないものは鉄より硬いものだ。色々な硬さの剣を創造してそれをこの刀で切ってみたら鉄ぐらいの硬さまでなら切ることが出来た。
「ギギャァァァ!!」
「おっと」 ドンッ!!
動きも速い。さっきまで結構距離があったのにもいつの間にか俺の目の前にいて攻撃を仕掛けて来た。
しかし、硬化しているとなると厄介だ。この剣であの程度の傷だ。普通の剣では攻撃すら通らないだろう。
それに、あの回復力。さっき見たが、俺が付けた傷の殆どが回復していた。エレナの起動スキルを使った時の攻撃速度でないと倒しきれないだろう。
さて、どうしたものか……。
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