謎の変異

「ハァッ!!」

「ギギャ!?」


俺達は昨日、途中で中断したクエストの続きをしている。

そして、何故か昨日のことがあってからエレナは俺とリアラに懐いた。ただ当たり前のことを言っただけでこれだけ懐かれるとは思ってはいなかった。

いつも敬語で話されると雰囲気が硬いので敬語をやめてくれとエレナ頼んだところ快く了承してくれた。


「これでゴブリンは指定数倒し終えたな」

「はい、あとゴブリンメイジが残り三体です」


千里眼マジ便利。おかげで町に出てクエストを再開してから、エレナの千里眼でゴブリンとゴブリンメイジをどんどん見つけてまだ二十分しか経ってないのにもう残りがゴブリンメイジ三体になった。


「エレナ、千里眼で今この周りにゴブリンメイジがいるか見てくれ」

「了解」


そしてエレナは千里眼スキルを使って周りにいる魔物の中からゴブリンメイジを探し始めた。


「見つけた!丁度ゴブリンメイジが三体いるよ!」

「よし、そいつらを倒せばこのクエストは終わりだ」


変なトラブルがないとクエストが終わるのはやっぱり速い。レジェスの時に受注したゴブリン討伐よりに速く終わるってことは、それなりにレベルが上がってきたということだな。そして何よりも大きいのは、エレナという頼りになる仲間が増えたことだな。


「それじゃあ行きましょう」

「「おー!」」


リアラがそう言うと俺とエレナは同時に返事をする。

そして、エレナが見つけたゴブリンメイジがいるところに俺達は向かった。



しばらく走っているとゴブリンメイジらしき影が見えた。ゴブリンメイジの特徴であるピンク色の影なので間違いなくゴブリンメイジだろう。


「ちゃんと三体いるな?あいつらを倒せばこのクエストは終わりだ」

「じゃあ、さっさと終わらせるよ!」


そしてエレナは、自分の足に強化スキルを使い脚力を強化して瞬時に三体のゴブリンメイジの間合いに入る。

強化スキルは起動スキルとは違い、体内の筋肉や骨を強化して脚力や腕力を上げる。起動スキルの速さには到底追いつけないが起動スキルよりもスタミナ消費を抑えられるのでエレナの速さで攻める戦闘スタイルには俊敏が通常の三十倍になる起動スキルと同じくらい相性がいい。


スパッ


「ギ?」


エレナが三体の内の二体の首を切り落とした。あまりの速さにゴブリンメイジは自分が切られたということに気付いていない様子だった。


「あと一体!」


もう一体のゴブリンメイジがエレナのいる方向を見る前にエレナは間合いに入り手に持っている剣の刃はゴブリンメイジの首に向かっていく。

誰もがエレナの勝ちをを確信した瞬間—


「ギャァァァァァァッッッ!!!」

「ぐっ……!」


急にゴブリンメイジがこの場の空気を大きく揺らすくらい大きな声で咆哮をあげた。

俺とリアラは少し遠い場所にいたので耳を塞ぐだけで特にそれといったダメージはないが、ゴブリンメイジとゼロ距離の場所にいたエレナとっては話は別だ。

これだけ遠くても耳を塞ぐほどうるさいのにゼロ距離だと耳へのダメージはかなりあるだろう。


「ッ……!!」


思った通り、エレナにはその場で立ち上がれないほどのダメージをあの咆哮で受けている。

そして、それを狙ってゴブリンメイジは持っている斧らしき武器でエレナに攻撃を仕掛けようとしている。

俺ではあの距離まで走っても間に合わない。何かいい方法は……。


「……そうだ!リアラ、俺の足に強化スキルをかけてくれ!確か付与スキル持ってただろ!?」

「は、はい。わかりました!」


そして、急いでリアラは俺の足に強化スキルを付与した。強化された足でエレナの方に向かって走る。


「グギャギャ!!」


斧が振り下ろされる瞬間に俺はエレナを抱えてゴブリンメイジの間合いから離れる。


「ご、ごめん」

「謝るのはあいつをどうにかしてからだ!」


そして、俺はエレナを抱えた状態でリアラがいる所まで戻って来た。


「シロさん、あれどう思いますか?」

「……間違いなく普通じゃない、ということはわかる」


戻って来た俺は改めて咆哮をあげたゴブリンメイジを見た。


「ゴブリンメイジってあんな色でしたっけ?」

「いや、ゴブリンメイジは体の色がピンクなのが特徴の魔物だ。しかも、強さはゴブリンとそれほど変わらない。急にあれだけの大きさの咆哮をあげる筈がないんだ」

「だから、普通じゃないんですね」


今俺達が見ているゴブリンメイジの姿は、元々ピンクだった体の色が真っ黒に染まり周りには禍々しいオーラを纏っている。そして、今まで普通の目だったのに、今はまるでように赤く目が染まっていた。

このゴブリンメイジの今の状態は、まるで狂戦士バーサーカーのような姿だった。

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