緊急クエスト発令!

レジェスの町。そこはこの世界では珍しく平和な町である。そして、今は朝の七時。町中の人々が起床する時間。そして、一部の人がまだ睡眠をしている時間だ。そんな平和な朝が、


ビー! ビー! ビー!


町中から鳴り響くギルフォンの一斉の呼び出しが、今までの平凡な日常が終わる合図だった。



ビー! ビー! ビー!


「うるせえぇぇぇ!!」


何で朝の七時からこんなにうるさい音でギルフォンがなるんだよ!この前のはもっと静かな音だったぞ!災害か何かが来てるのか?

そう思い、ギルフォンの画面を見てみると、


「は?緊急クエスト?」


画面には緊急クエストが発令されたこととすべての冒険者は至急ギルドに集まることだけ書いていた。


「とりあえず、ギルドに向かうか。ギルドに行かないと何もわからないしな。」


そして俺はギルドに行く準備を始めた。

準備中にふと部屋の鏡に映る自分の姿を見た。


「そう言えば、たった三日しか経ってないのに随分とこの姿に慣れたな。」


前はかなり嫌な姿だったが、今では好きまでとはいかないがそんなに嫌ではなくなっている。慣れとは怖いものだ。


「シロウさん!準備出来ました?」


おっと、そんなことを考えてるうちにリアラの準備の終わったらしい。自分の姿のことなんて別に後で考えればいいか。そして俺は、さっと準備を済ませて部屋の外に出て、待っていたリアラに「おはよう。」と挨拶をしてリアラも「おはようございます。」と返してくる。朝ごはんを済ませて俺達はギルドに向かった。



俺達がギルドに着くと既にギルドにはかなりの人が集まっていた。


「朝から緊急クエストって…。」

「別にこんなに早くなくてもいいじゃない!」

「はぁ、朝飯食いそびれた…。」

「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス。」


やっぱりギルドに着てる人の大半がこんなに早い時間の緊急クエストにはご立腹のようだ。というか、最後の人は朝早くに起こされたことに怒りすぎだろ。変なオーラが見えるぞ?

俺とリアラがしばらく静かに待っていると、ギルドの受付の人が出てきた。


「皆さん!今から緊急クエストの内容をご説明するのでご静粛にお願いします!」


受付の人がそう言うと、周りの人達は静かになり声のした方、つまり受付の人の方へ意識が向いた。

こんなにも朝早くからの緊急クエストの内容とは何なのだろう。


「それでは、緊急クエストの内容をご説明します。今回の緊急クエストの内容は討伐でも採取ではございません。皆さんには撃退をしてもらいます。」


撃退?そんなにも討伐が難しい魔物なのか?

そして、一人の冒険者がする受付の人に質問した。


「あの、撃退対象の魔物の名前ってなんですか?」

「その、魔物ではないんです。」


どういうことだ?魔物ではないものを撃退する。魔物以外でいうと…人か?


「撃退対象は…邪龍神教です。」

「……え?」


「「「「「「ええええええええええ!?」」」」」」


冒険者全員が驚いた。その中には俺とリアラも含まれている。でも、どうして急にこの町に?


「昨日シロウ様の報告を受け、ロテアの森に調査に向かった調査部隊の方々が今日の六時五十分くらいに帰ってきました。調査部隊の情報によると、約五千人の邪龍神教の信徒が武装をしてレジェスの町に接近中とのことです。」


邪龍神教が狙うとしたら邪竜デスラの器であるリアラだ。おそらく、邪竜デスラの器がここにいる情報を掴んでこちらに向かってきているのであろう。でも、いつから気付いていたんだ?俺がこの世界に来てから、或いは俺は来る前か。


「あと十分くらいで着くとのことです。」

「あと十分か。皆、何故レジェスの町に邪龍神教が攻めてきたのかはわからない。けど、邪龍神教に負けたいか?」

「いや、邪龍神教にはぜってぇ負けねぇ。今まであいつらのしてきたことを俺達が裁いてやろうぜ!」

「「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」


ギルドの皆が邪龍神教になんて絶対に負けたくない、という意志が強いのか一気に皆の士気が上がる。

奴らの狙いは確実にリアラだ。リアラが不安そうに俺を見てくる。俺はリアラを邪龍神教から守ると誓った。絶対に守り通してやる。


「じゃあ、さっさと準備して町の外に出て戦闘準備だ!」

「「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」


ギルドの冒険者は、今まで邪龍神教がしてきたことを裁くため。俺は、奴らが狙うリアラを守り通すため。

理由は違うが目的は同じ。

俺も邪龍神教になんて負けてられないな。

そう俺は思った。そして、俺とリアラも邪龍神教との戦闘に向けて町の外に向かった。


今、レジェスの冒険者達と邪龍神教の信徒達の戦いが始まろうとしている。

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