ヒーロー少年だった

その少年は内気な性格だった。

過去に虐めを受け、それから人と関われないでいる。


そんな少年がある日、偶然にも男に殴られ痣だらけの少女と出会う。


少年は男に立ち向かった。

それは咄嗟のことで少年にもどうして出来たのか不思議だった。

非力なので自分も痣だらけにされたが

必死に喰らい付き、少女を守り、そして…男を退けた。


一部始終を見た周りの人は言う。

彼の勇気が少女を救った

彼の行動に敬意を表する

彼の心はヒーローだ!


少年はこの時初めて、内気だった己に自信を持ち

そして潜在的な正義感が己の内に秘められていたを知る。

彼は思う



この心の勇気や正義があれば、もっと多くの人を救えるのではないか?



もうそれは『内気な少年』では無く『ヒーロー』その者であった。

彼は言う

僕はもっと人を救いたい

僕はもっと人を助けたい

お願いがある!みんなの力を貸してくれ!


周りの人はこの時一同に、目の前のヒーローに信頼を持ち

そして各々の正義感がヒーローを中心に集まる。

彼らは思う



もっと世の中をよくしよう!






・・・しかし、現実は甘くは無かった。

どんな正論を唱えても、どんな正義を掲げても

肝心の世の中は動いてくれず、聞く耳も持ってくれず…

終いには、彼らは


悪とみなされた。


頭を抱える周りの人にヒーローは叫ぶ。

残された手段は一つしかない…


立ち上がれ!


心を強く持て!


我々を悪人と呼ぶ、偽善を睨め!


そして手には



武器を持て!



『周りの人』が『兵士』となる。

武器を背負って、列をなす。

ヒーローはその兵士を見て笑う。



己の為に戦う兵士…!

何て素晴らしいんだ!!!





とある兵士が思い返す。

あの時、少年の心にあった正義は本当に正義だったのだろうか?

あの時、少年の心に会った正義が嘘だったら?


仮にそうだったとして

一度誓いを立てた兵士に帰る場所は無かった。


周りが悪だらけの世の中で、ただただヒーローの為の兵士であり続けた。


そうするしかなかった。

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