性的な目

私の両親は大っぴらにしすぎるきらいがあり、成人向けの本すら隠そうとしない。

私は幼い時にその気持ち悪い本を見て以来、性的な物が嫌い。


私の体は人の煩悩を刺激するらしく、獣たちは汚いよだれを隠そうとしない。

私は幼い時からその気持ち悪い視線を見て以来、卑猥な目が嫌い。


私の好きな物はラブロマンスで、このときめく想いは隠し切れない。

私は二十歳はたちを過ぎた時に心を許せる同性が出来て以来、彼女のことが好き。




いえ、好きだった。


不覚だった

油断だった

失望だった


同じ性の人間ですら私にあの欲に塗れた表情を向けてくるとは思わなかったのだ。


私の愛したラブロマンスに泥を塗った彼女は許さない!

決別し、見捨てた。

彼女だった獣が頭を下げてすがるが、蹴り飛ばした。

私の失意はもう二度と戻る事は無い。




性的な目が嫌いだ

性的な目が嫌いだ

性的な目が嫌いだ


嫌いだ

嫌いだ 

嫌いだ 

嫌いだ!


なぜ人は劣情を求めるのか?なぜ私を性欲の道具として見るのか?

なぜそんな物があるのか?


理解ができない。




…だからこそ




別れ際、最後に彼女だった獣と問答する。


「なぜそんな目で見る?」

「好きだから」

「意味が分からない」

「好きだったらしないと思ってるの?」

「好きだったら相手の事を思いやるわ」


「わかったわ。あなたそう言う女だったのね」


「?」

私は顔をしかめる。言ってることがますます分からない。


「思いやると言ったわね、ならあなたは私の気持ちを思いやった?」

「は?」

「いいえ、思ってなんかいないわね。あなたは自分の事ばかり考えていたのよ」

「そんな事は無い」

「あるわ、現にあなたは自分がいつも性的な目で見られてると思い込んでる」

「…?」

「ハッキリ言うわ







あなたは







何で私もこんな人を好いたのかしら?冷静になるとよく分からないわ」

「何を言ってるの?」

「自分を『性的な目で見てもらえると思ってる』ブス。自意識過剰だわ」


彼女は捨て台詞を吐いて何処かへ消えた。


残された私は独り鏡を見る。




「私は綺麗よね?」

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