努力の成果

国語、数学、理科、社会…

時間、習慣、金銭、青春…

全てを名門校の大学の為に注いできた、努力家の青年がいた。

しかし全てを努力の為に注いでも、入学は出来なかった努力家でもあった。


努力家はそれでも諦めない。

何故なら努力は裏切らない。

続けていく先にある景色を見てみたい。

常にそう思っているからだ。




何度目かの試験が終わり、努力家の目にニュースが映る。


「○○大学でカンニングが発覚…」


世の中には軟弱な奴がいる。

努力を放棄し手を汚した、それだけのことだ。


「今度は○○大学で裏口入学が発覚…」


世の中には親に甘え続ける奴がいる。

努力すらやってこなかったツケが回った、それだけのことだ。




例え何度失敗しても努力家は努力を信じ

努力を信じる己を信じ

不正働くなどは脳から一蹴している。


そう

例え年下に次々と追い越されてもだ。

例え天才が遠くから見下ろしていた、としてもだ。




予備校の夏期講習が始まり、努力家の耳に談笑が届く。


「あの努力家な子、いつになったら合格するんですかね?」

「正直、見込みは無いと思ってるよ。まぁ本人が続けたがってるから止めないがね。


それに、だ







ああいうのは『金を落とす』。

一人ぐらい、そういうのが居ても構わんだろう?」







努力家は予備校を止めた。

当然の結論だ。

迂闊に周りを信用できなくなったので、今度は独学に励むことに。


努力家は独学でも諦めない。

何故なら努力は裏切らない。

続けていく先にある景色を見てみたい。

常にそう思っているからだ。




しかし、反して努力家は落ち続けた。




まずは成績が落ちた。

毎週5点づつ引かれてく。

次は勉強の効率が落ちた。

集中力が日に日に無くなっていく。

次は体重が落ちた。

気が付くと頬が痩せこけてく。




次に次にと落ち続けた努力家の向かう景色は…。




日光を遮るカーテン


埃の積もった参考書の山


折られたペンの残骸


そして黄ばんだ布団の殻。




それを見た努力家は、努力を捨てたのだった。


そう

例え努力家に惚れ、応援し続けた人が居たとしても。

例え裏切ったのは努力では無く本人だったとしても。




彼は努力を二度としないだろう。

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