合理的母性愛神話

「婚活しようと思う」

思い立ったが吉日、28歳の独身OLの私は今まで結婚しようと考えた事は無かったが孤独に耐えきれなくなり動きだしたのだった。




結婚するならやっぱり収入が安定した人が良い。

合理的だ。


しかし友人は

「性格の相性も考えた方が良い」という。

私は二番目ぐらいには参考にしようと思った。




仕事の合間に婚活をする生活を送っていたら、上司に「君がいなくなると会社が困るから婚活をやめろ」と言われた。

私は仕事をやめて、専業主婦を目指す事にした。

合理的だ。


しかし友人は

「上手く行くかも分からない婚活なのに捨て身ではないか?」という。

私は収入には余裕があったし、しばらくは大丈夫と思った。




数回目の婚活にして初めて彼氏を掴んだ。

お相手の職業は医師で収入も高かったし、性格もイケている。

私は順調に彼とお付き合いをし、晴れて結婚をした。

これで安定した暮らしができるという物だろう。

合理的だ。


しかし友人は

「子どもを産む予定はある?妊娠する時は慎重になった方がいいよ」という。

夫の収入的に2~3人は養って行けそうだったし、問題ないと思った。




30歳にして出産をした。元気な双子だった。

仕事で忙しい夫も出産の時は駆けつけて来てくれて、皆で大喜びした。

私は「子どもは私に任せてあなたはお仕事頑張って」と夫に伝える。

合理的だ。


しかし友人は

「今のあなたに子どもを育てるのは難しい」という。

友人は未だに独身だったし、嫉妬だろうと思った。




子どもが2歳になった。

毎日が慌ただしく、独り暮らしと違い家族全員分の家事を毎日熟さなければならない。

強暴に遊びまわる双子は、私の活力を吸い上げて生きているかの様だった。

ふと鏡を見ると私の顔は驚くほどに老け込んでいる。


それでも私は主婦として家事を全うすべきだろう。

合理的なはずだ。


友人とはもう連絡を取っていない。




目が覚めると知らない天井が見えた。

辺りを見渡せば、白い清潔感のある部屋のベットで私は寝ていた。

夫や子どもが待っているので家に帰ろうとしたら知らない人に止められた。

私はその人を突き飛ばし、歩いて行く。

私の帰るべき場所を目指して・・・。















「家が・・・壊されている・・・」




戦慄した。


私は盲目的なまま玄関に駆け上がる。


窓ガラスは四方八方に飛び、それが足に突き刺さる。


壁のいたる所が切られたり破壊されており、崩れた壁紙が手に付着する。




双子は?夫は?




探しても何処にもいない。




呆然とする。




急に肩を叩かれた。




振り向いたら、警察官がいた。




何か言っている。




「あなたを・・・




一家殺人で・・・




逮捕します・・・?」

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