勝者の自由

ここは天も地も無い閉ざされた世界のディストピア。

幸福も活気も何も無い、ただ一つの可能性を除いては。

その可能性を懸けて開かれる、自由のバトルフロンティア。


力を振るえ!知恵を絞れ!

足掻け!唸れ!最後まで!

生き残った一人だけが、自由を得るゲームなのだから。




そして死闘を潜り抜け、バトルフロンティアを制した勝者が現れる。

勝者は言った

「自由を奪われたディストピアでは、俺は無能で無力な人間だった。この奇跡に感謝をし、縛られる事なく生きていたい!」


そこへ勝者の言葉に拍手を送り、バトルフロンティアを主催する者が現れる。

主催者は言った

「勝者に相応しい素晴らしい、心意気だ」

「さて、これからは自由の身。将来は自ら選べ、個人の意思は尊重される」

「君は何をする?」


勝者は迷う

「俺はディストピアを抜け出す事に必死だった。だから落ち着いて自由を手に入れた後を考えた事は無かった」

「・・・俺は一体、何をすればいい?」


主催者は微笑む

「迷うのも無理はない。しかして迷う必要も無い」

「自分に何ができるかを考え、思うように進めば良い」


勝者は思案する

(自分には何ができたのだろうか?あの闘いで何をやって来たのか?)

(自分より力のある猛者は幾らでもいた。自分より頭の回る賢者は幾らでもいた)

(では自分は他人より、『何が勝った』のか?)




・・・勝者は答えを得た。


その答えは『運』である。




今まで数多くの危機を乗り越えた。

それらは無力であった勝者に必ずしも実力で何とかなる物ばかりではなかった。

だとすれば勝者には幸運が味方をしていたのだろう。

幸運が導いてくれたのだろう。

それが勝者の勝っていた物なのだろう。


自由を得た、答えも得た。

ならば後は選ぶだけだ。


勝者は主催者に向き直り、自由に選んだ意思を伝える。

「俺には実力と運で闘いを生き残ることができる」


「だから俺はギャンブラーになろうと思う」


主催者は頷いてこう言う

「それもまた、自由な選択だ」




こうして自由を得た勝者は、新しい世界に踏み出し

僅か1年で敗者と化し、生涯の幕を閉ざされた。

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