共有地はぎゅうぎゅう
見渡す限りの青い空が広がる。
見渡す限りの青い草が生い茂る。
皆が暮らすこの牧場は、食べれば食べるほど大きくなり強くなり逞しい牛になれる特別な草が生えていた。
皆は素晴らしい牛になるために草を食べ続けるのだ。
一心不乱に食べ続け食べ続け、寝る間も惜しんで食べ続け食べ続け、牛の体は成長し続け。
ゴンッ!と頭をぶつけた。
どうやら食べ続ける事に夢中になりすぎ、他の牛に当たってしまったらしい。
スッと横に避ける。
が
ゴンッ!と肩をぶつけた。
どうやら今度は横にいる他の牛に当たってしまったらしい。
スッと後ろに避け・・・
いや何かがおかしい。
牛は辺りをよく見渡す。
そこには普段は散り散りになっているはずの牛たちが、その大きくなった体でお互いを潰し合う様に密集していた。
牛は置かれた状況を考える。
何故皆は同じ場所に集まったか?何故皆は他の場所へ行かないのか?
・・・何故『食事の邪魔』をするのか?
牛は憤りを覚える。
見れば隣にはまだ草が生えている。その上にいる牛をどければ食べられる。
だから牛は、ド突いた!
食べることにしか目が無い牛をド突いた!
やった者勝ちだ!そこを退いた!
見渡す限りの青い空を赤い雨が曇らせる。
見渡す限りの青い草は赤い沼地に塗り替わる。
皆が暮らしたこの牧場は、争えば争うほど大きくなり強くなり逞しい牛になれる、戦場だ。
皆はお互いの存続をかけてお互いを喰らい続けるのだ。
一心不乱に戦い続け戦い続け、寝る間も惜しんで戦い続け戦い続け、牛は喰らい合い続け。
最後に残った牛だけが気づくのだ。
「自分は飢えて死ぬのだ」と。
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