女の言う男

舞台の上、一人の女がその中央で声を上げる。

曰く、女は男という生き物が何たるかを語る。


男とは醜い生き物である!

男とは頭の悪い生き物である!

男とは女の考えを理解しない!

男とは女の敵でしかない!


それを聞いた聴衆の一人の男、手鏡を女に突きだし言い放つ。

「自分の顔を見て、同じことを言えるか?」

聴衆は女を指さし、女は嘲笑に包まれた。




女は以後、悔しさをバネに美貌に励んだ。

女の努力は功を奏し、たちまちにして誰もが驚く美人になった。


そして・・・

再び舞台の上、一人の女がその中央で声を上げる。

曰く、女は男という生き物が何たるかを語る。


男とは醜い生き物である!

男とは頭の悪い生き物である!

男とはセックスが下手だ!

男とは夢見がちでダメだ!

男とは女の考えを理解しない!

男とは女の敵でしかない!


それを聞いた聴衆の一人の男、嘲笑の顔で答える。

「お前の話は語りでもなく茶番ですらない。男を知った気になっただけ」

聴衆は男を称賛し、男は仲間に包まれた。




女は以後、その男に恨みを持った。

女の怨恨は燃え盛り、たちまちにして復讐の鬼に変えた。


そして・・・

女は男の住居に来た。女は頭の中を怒りで巡らす。


あの醜い男の事だ、ろくな行いをしてないはず。

あの頭の悪い男の事だ、ろくな土地に住んでないはず。

あの女を思いやれない男の事だ、荒れた生活をしてるはず。

あの女の敵でしかない男の事だ、きっときっと・・・


そこには『あの男』がいた。

立派な家を構え、明るい声で会話して、笑顔で子どもを抱え上げ

そして、隣には才色兼備な『妻』がいて、

楽しく語らう『あの男』の姿が。


男は、『あの男』でありながら、『女の知らない男』でもあった。

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