二人のカメラマン

あるところに二人のカメラマンがいた。

二人の外見に特に違いはない、カメラを首にかけた普通のカメラマンだ。

二人の被写体にも違いはない、富士山を良い場所で撮るつもりだ。


カメラマン達はそれぞれ良い場所を見つけた。満開の桜が咲き誇り、その背景に富士山が写るので「これは絵になる」と確信していた。




片方のカメラマン、ここで桜の枝が邪魔になる事に気づく。

彼は枝を折って自分の思う理想の写真を撮った。


もう片方のカメラマン、桜の枝が邪魔になる事に気づく。

彼はそれもまたリアリティだとありのままの写真を撮った。




枝を折ったカメラマン、桜の花に睨まれながら写真を投稿。

それは大衆に受けし彼の元には仕事が殺到した。


枝を折らなかったカメラマン、特に何事もなく写真を投稿。

それは誰の目に留まることも無く、仕事もこなかった。




仕事を貰ったカメラマン、あらゆる木々の枝を折りながら写真に邁進した。


仕事の無いカメラマン、ひもじく生涯を終えた。




邁進するカメラマン、世間に自身を晒される。

「スクープ!名カメラマンの悪行!!」何とも安っぽい見出しだ。

邁進するカメラマン、それでも写真を撮り枝を折り続けた。

世間は次第に彼の写真を見なくなった。


我に返ったカメラマン、ここで周りを見て初めて気づく。

積み重なった枝の残骸の事。

世間が求めるは真実でも、理想でも無い事。

自分を貶めたのは同じ、枝を折るカメラマンであった事・・・。


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