二人のカメラマン
あるところに二人のカメラマンがいた。
二人の外見に特に違いはない、カメラを首にかけた普通のカメラマンだ。
二人の被写体にも違いはない、富士山を良い場所で撮るつもりだ。
カメラマン達はそれぞれ良い場所を見つけた。満開の桜が咲き誇り、その背景に富士山が写るので「これは絵になる」と確信していた。
片方のカメラマン、ここで桜の枝が邪魔になる事に気づく。
彼は枝を折って自分の思う理想の写真を撮った。
もう片方のカメラマン、桜の枝が邪魔になる事に気づく。
彼はそれもまたリアリティだとありのままの写真を撮った。
枝を折ったカメラマン、桜の花に睨まれながら写真を投稿。
それは大衆に受けし彼の元には仕事が殺到した。
枝を折らなかったカメラマン、特に何事もなく写真を投稿。
それは誰の目に留まることも無く、仕事もこなかった。
仕事を貰ったカメラマン、あらゆる木々の枝を折りながら写真に邁進した。
仕事の無いカメラマン、ひもじく生涯を終えた。
邁進するカメラマン、世間に自身を晒される。
「スクープ!名カメラマンの悪行!!」何とも安っぽい見出しだ。
邁進するカメラマン、それでも
世間は次第に彼の写真を見なくなった。
我に返ったカメラマン、ここで周りを見て初めて気づく。
積み重なった枝の残骸の事。
世間が求めるは真実でも、理想でも無い事。
自分を貶めたのは同じ、枝を折るカメラマンであった事・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます