第1話 冬休みの始まり

〜♪


スマートフォンの着信音が鳴る。


「ああ、ノエル、ちょこしようと思ってたところ」


「累さん、今ビデオ通話出来ますか?」


うん、と答えると累はビデオ通話のマークをタッチした。


最近は少しずつこういった機械類の操作も慣れて来ている。


「あ、累さん、こんばんは」


累の顔があちらのスマートフォンに映ったのか、改めてノエルが挨拶をする。


「やあノエル、テスト勉強はどう? 林女ももうすぐ期末テストだったよね?」


林女と累が通う札幌海陵は期末テストの日程が重なっている。


つまり、お互いが赤点を採らなければ同じように時間が取れるようになる。


「はい、今回もナオちゃんと一緒に勉強してますから。 たまに美咲さんとも」


ナオちゃん、つまり寿奈桜ちゃんの勉強をみてあげてるのか。美咲さん(神崎さん)とも上手くやっているようで安心する。


「そっか。俺も順調だし、冬休みになったらまたそっちに行こうと思う。 実は飛行機のチケットもさっき取った」


ノエルの表情がパッと明るくなる。


「本当ですか!? 冬休みはお姉ちゃんも帰って来ますし、また皆で会えますね」


皆の中にはYuKuRuの人たちも入っているのだろう。また面白くなりそうだ。


良ければ、とノエルが窺うように尋ねる。


「空港まで迎えにいってもいいですか…?」


「いや、そこまでは…」


「私が行きたいんです。 …そっちの方が長く一緒にいれるから…」


累の言葉を遮って言いながら、ノエルは顔を赤くしていた。


「わかった。 じゃあ23日の14:30に羽田で」


ノエルの表情はやはり明るかった。


通話を切った途端チリン、とちょこのメッセージが届く。


『さっきは、ありがとうございました。 会えるのを楽しみにしています。』


-俺もだよ。 お休み。


『お休みなさい。』


最近通話にこだわるノエルの気持ちがわかった気がした。 ちょこのメッセージだとなんだか味気ない。


さて、寝るべさ、と思ったその時。


〜♪


また着信音だ。 見てみると寿奈桜の名前が。


寝ると決めた累は当然無視する。


〜♪


2回目の着信。


「無視すんなし!」


通話が始まった途端寿奈桜のツッコミが聞こえる。


「もう寝るし」


「真似すんなし!」


いつも通りのやり取りを一通り終えると、寿奈桜が割と真面目なトーンで切り出した。


「ルイ兄さ、クリスマスどこ行くか決めたの?」


「ん? クリスマスか? ああ、もうそんな季節か」


クリスマス、そうか。 寿奈桜が意図することがわかった。


「いやールイ兄! そんなことじゃ嘉神川が可哀想っしょ!」


「まあ、確かにそうなんだが。 何も考えてないんだよなぁ」


「ルイ兄と嘉神川にとってはクリスマスだけじゃないし!」


「わかってるし、考えるし」


「だーかーらー、真似すんなし! こんなんじゃ先生にも怒られるし!」


「あー、それはまずい」


そうだ、記念日まで忘れたら、先生こと鈴さんに怒られかねない。これはなんとかしなければ…


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後日、累は信頼できる人に電話をかけていた。


「というわけなんですが、どうでしょう、信さん」


カフェYuKuRuの店長、ではなくマスターの信が電話越しに答える。


「悩める少年よ、キミら付き合ってもう1年になるんだろう? ノエルちゃんの行きたいところくらいわかってると思ったんだけどね」


ため息まじりの信の声に累のため息も重なる。


「会える機会もそんなに多くはないので思い出になるような場所にはしたいんです。 ただ周りの観光スポットはある程度行ってしまっていて」


「キミたちは高校生なんだ、別に周辺の観光スポットに限らず普通のデートすればいい。 ルイのことだ、余裕を持ってこっちに来るんだろ? うちに来るといい」


まあ、それもそうか。 何も焦って考える必要はない。 今はテストに集中しよう。


「ありがとうございます。 湘南に戻ったら顔を出します。 ではお休みなさい」


「おう、じゃあお休み、悩める少年!」


通話が終了すると、ため息と共に


「…なまらめんどくさい」


癖が出た。

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Memories Off the Story of Noel 高橋結衣 @kokoro774

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