第48話 GO WEST!

 ニンニキニキニキ ニンニキニキニキニニンが三蔵

 ニンニキニキニキ ニンニキニキニキニシンが悟空

 西へ向うぞ ニンニキニキニキニン

 西にはあるんだ 夢のくにンニキニン


 この歌はずっと昔にテレビ放送されたとある番組のエンディングなのですが、フルコーラス知っている人は結構な年齢の方だと思います。

 西遊記のコメディ人形劇でした。

 ヤンマーの提供で番組が始まる前に「決してひとりでは見ないでください」というおどろおどろしい悟空のセリフがあり、幼い子供たちはそこで震え上がったという話もあります。

 私はエターナル35歳なので知りません。

『南風』という小説を書いたのに西へ向かいたいえーきちです。

 皆さまいかがお過ごしでしょうか?

 先日、バイク屋の友人のフル自作サイドカーに乗せてもらって、記念に撮った写真をTwitterにあげたところプチバズりました。100弱のイイねですけど。

 小説もバイクも、ニッチなネタへの食いつきっていいですよね。

 とある編集者様が言っていました。

 万人に受ける小説じゃなくても、自分が好きなニッチな物語を書けばよい、と。

 一億二千万人も人がいれば、どんなニッチなネタでもベストセラーになり得る。

 確かにね!



 *    *    *


 でね、なんで今回冒頭から『GO WEST!』なのかと言いますと、今回フィンディル様の自主企画「あなたの小説の方角はどちら?」に『南風』で参加しました。

 その自主企画は作品の方角を自分で宣言して、それが実際フィンディル様の解釈と一致しているのか、また違うのならどのように違うのかを理由(感想)つきで教えてくれるという企画でした。

 ただ、『フィンディルの感想』という感想活動をしているフィンディル様をよく知らない人は、何言ってんだえーきちは? と、思うかもしれません。

 小説に方角? タイトルか? 内容か?

 そんなもの自分の作品はないんだけど……

 方角とはそういうことではありません。

 簡単に言うと、その作品がどんな要素を含んでいるのかを方角というシステムを用いて示している。でいいかな? 伝わりました?


『作品の方角とは、東西南北のそれぞれを

 北:大衆的 エンタメ

 西:純文学的 昇華

 東:実験的 新規性

 南:抽象的 感性

 と設定したうえで、それぞれの作品の魅力が向いている方角を十六方位で区別したものです。』(フィンディル様の企画概要より引用。詳しくはリンクを見てください)


https://kakuyomu.jp/works/16816927862644190478


 今回の自主企画は完全に作品の方角寄りです。

 フィンディル様の感想活動(以後フィン感)では、方角はあくまで感想の一部であり、その作品の方向性を示しやするするために表記しています。

 フィン感のメインは指摘や改善案を含むもの凄い量の感想なので、そこをお間違えなく。


 でね、私は普段公募やコンテストに作品を応募していますが、そういった作品は概ね北寄りになります。

 いわゆるエンターテイメントですね。

 フィンディル様の話ですと、北北西から北北東までは主にエンタメに向きをおいた作品であると言えるらしいです。

 一般公募の要項にだいたい書いてありますよね。広義の意味でのエンターテイメント作品って。

 エンタメって言葉にすると難しいですけど、とっつきやすく、わかりやすく、盛り上がりやすく、感情移入しやすい、ってところでしょうか。この場においては、エンタメに関しては皆さまの方がよくわかっていらっしゃると思います。

 特に真北の作品なんかはそのものズバリなエンタメのイメージ。

 この方角の表記って、実際フィン感で使ったのが最初ですけど、結構Twitterでは何人かは使っています。

 便利なんですよ、作品を説明するのに。

 小説だけじゃなく、マンガも。

「あの作品はもろ真北に向いてるよな」とか「あのマンガは方角で言うなら西向きでしょ」とか。

 ただ、それが合っているのかはわかりませんけど。

 それが今回の自主企画でした。


 私は小説でもマンガでも、西向きの作品が好きです。

 西向きは純文学的で昇華に寄った作品です。エンターテイメントじゃなくても、なんだか読んだあとに胸にズンとしこりが残っても、盛り上がらなくさらっとラストが流れてしまっても、西向きが好きです。

 公募では北向きばかりを書いていますが、公募やコンテストが絡まない作品なら西向きも書いてみたいと思って最初に書いたのが『初夏色ブルーノート』でした。


https://kakuyomu.jp/works/16816452219973829828


 この作品では初めて、読み手の共感を無視してキャラの人間性を思いっきり出してやろうと思いながら書きました。

 たとえ読み手が共感しなくても納得しなくても、それがそのキャラであって、そのキャラだからこその物語である。それだけを意識しました。

 私の考えでは、物語のためのキャラが北向きで、キャラのための物語が西向きなイメージです。(これは正解ではないかもしれませんけど)

 しかし、私はさらっと西向きが書ける人間ではありません。

 西向きに向いた作家様もいます。普通に書いた作品が西向き、みたいな。

 私は悩んで悩んで頭をひねって書かないとこういった話は書けません。

 で、自分的に西に向けたつもりですけど、フィン感では北北西となっていました。

 あれだけ意識して書いても、です。

 手強いぞ西向きは。

 生半可な覚悟で手を出すと火傷する。

 でも、自分でも結構お気に入りな作品になりました。

 私の初の西寄り。


 で今回の『GO WEST!』に繋がります。

 フィンディル様の自主企画の参加条件が、企画のための書き下ろしであること。

 私は西に行く!

 前回は読者の共感を無視して書いたから、もっと西に向かうにはどうしたらいいだろう?

 作品の方角の解釈はフィンディル様だ。なら、フィンディル様も共感できないキャラにすればいいじゃないか。

「こんな人はいません」とか「この人の行動に賛成できません」とか、そんな人だって世の中には五万といる。ならその五万の中のひとりの物語を書けばいい。

 方向性は決まった。

 公募作を進めながら頭の中で何日も前から物語を練って、〆切り僅か二日前に書き上げた。(もっと早く書けよ)

 いざ、いざいざ合戦っ!

 タイトルは『南風はえ』!


https://kakuyomu.jp/works/16817139554714634519


 私は西に行きたかった。西にはあるんだ夢の国。

 タイトルは『南風』だけれども、『女は南に焦がれていた』なんて書き出しだけれども、私は西に焦がれていた。

 これはまさに西だ。

『初夏色ブルーノート』よりもずっと西寄りだ。けど、まあいっても北西かな?

 西北西までは……北西だ!

 私は北西を書いた!

 書けた!

 やったー!


 しかし、公開して読み返すたびに、「これって北寄りじゃね?」なんて思うようになってきました。そして案の定、フィンディル様の解釈では北北西でした。

 あー、西は遠い。

 西風ゼフィロスが吹いた。


 おあとがよろしいようで。



 *    *    *


 今回のフィンディル様の自主企画参加者様の中に、もうこれは間違いなく西向きだ。あー、西ってこれだよこれ! って作品があったのでご紹介します。


『北海道産ムラサキ雲丹』山口静花様

https://kakuyomu.jp/works/16816927863199352324


 ちょっとした飯テロです。

 こういう人、います。その辺にきっと。いっぱいいるかもしれないし、少ししかいないかもしれないけど、います。

 西ってこうやって書くんだって気持ちになります。それで書けるかどうかは別として。

 でも、思った以上にスッと腑に落ちる作品でした。

 こういうのが好きなんですよねー。


 さて、今回はフィンディル様の自主企画を軸に、私の作品を用いて方向のお話をさせていただきました。

 これだけ語っているにも関わらず、実際のところ方角は皆さまと同レベルでわかっていません。難しいんですよ方向って。

 今後、フィンディル様が同企画を再び開催するのはどうか未定だそうですが、ぜひまた開催してもらいたいものです。

 リベンジ、西!

 その時は皆さまも参加してみてはいかがでしょうか?

 面白いですよ。

 また、フィン感も随時募集しているそうなので、一万文字未満の短編をお持ちの方はフィン感にも応募してみてはいかがでしょうか?

 かなり勉強になると思います。

 え、東と南はどうしたって?

 ……………………GO WEST!


 それでは皆さま、また来月!

 執筆頑張りましょうねー!

(五分で読書に一作投げたいなぁ……)

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