第10話 物語の価値 ~Never Ending Story
樽いっぱいの泥水にワインを一滴垂らしたら樽いっぱいの泥水である。
樽いっぱいのワインに泥水を一滴垂らしたら樽いっぱいの泥水である。
(マーフィーの法則)
さて唐突だが、物語の価値はいったいどこで決まるのだろうか?
小説を例に取る。
キャッチ―なタイトル、好奇心を煽る導入と息もつかせぬ展開、美しい文章と描写、どこにも例がない斬新なストーリー。
どれも作品の価値のようであり、そうでもない。
これらがどんなに素晴らしかろうと、たった一か所で総てが駄目になる。
そう、樽いっぱいのワインの中の一滴の泥水のように。
これはあくまで私の持論である。
世間一般が私の持論とは反する動きを見せているが、それは私にとってどうでもいい事であり、そして自分の描く物語にはなんら支障はない。
私は完結済みの公募に物語を何作か出している。
鳴かず飛ばずなのは、この際置いておくとして、『完結済み』なのが問題である。
公募に出すにあたって、様々な小説賞をリサーチしたなんて事はなかった。遅筆な事もあって、そう沢山の作品を書く事ができなかったからだ。
昨年、カクヨムに参入して、終わらない物語もコンテストに出せる事を知った。
ああ、終わってなくてもいいんだ。へぇ……
でも、それって面白いの?
ってなった記憶がある。イヤ、今でもそう思う。
終わっていない物語って――何? サザエさん? ドラえもん?
そんな物語が最高な訳がない。(面白いかどうかではなく、最高かどうかの話)
ドラえもんは人気がある? 映画も人が入ってる? 当然だ。ドラえもんの映画はラストシーンがあるから。映画でテレビの延長を上映した所で、人はろくに入りっこない。何故って、最高ではないのだから。
物語を生み出す作者の腕は、『いかに最高のラストシーンを演出できるか』にかかっていると、私は信じている。
どんなに人を惹きつける導入を書いても、どんなに美しい文章で書いても、どんなに画期的な手法で斬新なストーリーを書いても、ラストシーンが「何じゃこりゃ」なら、その物語はクソだ。
買っていた連載作品なら、買うのをやめるか、売るか、お金にもならないなら資源ごみ行きだ。
そんな、ラストシーンのない物語が増えている。
本が売れない世の中で、最高のラストシーンのない物語が出版された所で、はたしてどこまで売り上げをのばす事ができるだろうか?
到底、メガヒットは見込めない。
当然、作家では食べていけない。
こんな世界を誰が作ったのか?
例えば映画、『Back to the Future』。
これは素晴らしい作品だと私は思う。
一作一作が面白くかつ、最高のラストシーンが演出されていてなお、三部そろってそれを上回るラストを迎える。
例えば小説、『デジタル・デビル・ストーリー』。
悪魔=悪だった当時、善と悪の隔たりをぶち壊したこの作品もまた、一作一作に最高のラストシーンを盛り込み、三部そろって完全なるラストを迎える。
はたしてこれが、ラストシーンの書けない作家に書けるだろうか?
例えば漫画、『暗殺教室』。
漫画は意外とその扱いが難しい。特にジャンプ漫画だと、人気がある物語は終わらせてもらえないと言う。(真偽はわからないが)
その中で、一話一話の短い話で心に響く話を描き、ダラダラと続ける事なく、最高のラストシーンに至った漫画だと、私は思う。正直、リアルで週刊誌を立ち読みしていて(買えよ)、コンビニなのにウルッときた。私の中では世界的人気を誇るドラゴンボールよりも上である。
例えばゲーム、『ドラゴンクエスト、ロト三部作』。
言わずと知れたドラゴンクエストシリーズの最高ストーリーだと私は信じている。ハッキリ言って、ドラクエ3で泣いた。まさに『そして伝説へ』だった。
ゲームシステムを向上させた所で、最高のストーリーが書けなければ、この先ドラクエを超える作品は出てこないだろう。
どれも、一作で物語は最高のフィナーレを迎え、続編があり、その総てが売れに売れた人気作品だ。
もちろん、物語が続くのはいい。むしろそれは喜ばしい限りだ。ただ、その一作一作総てに、最高のラストシーンが書けなくて、何が作家だ?
だらだらと、異世界でスローライフしてチートでハーレムで、何となく次の本に続く話が、メガヒットすると思うのか?
人気がなくなれば、畳めばいい。
いいよ、売る側は。その作品が売れればいいのだから。後に転売されようが、捨てられようが関係ない。本のゴミなんかどうせリサイクルされるんだし、作家だって使い捨てで問題ない。
そんな要求に、なぜ作家側が乗ってやる義理がある?
そこそこ売れたけど、畳まれた、しょうもないラストの作家だと、胸を張って言えるのか?
物語を書くと言うのは、ラストシーンを書くのと同義だと私は思う。
物語の価値はラストシーンで決まる。
日々、私は最高のラストシーンを考えている。例え続きが書けようとも、その物語のラストは、自分が納得できる最高でなくてはならない。
自分が大切に大切に仕込んだ最高級のワインに、一滴の泥水もいらない。
そう考える私は、時代の波に乗り遅れているのだろうか?
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