4-5

 ミーティングが終わり、カミコ先輩をマンションまで送り届けた僕は終電に乗る為に駅へと向かっていた。改札を通ると電車が入って来る所で、僕は慌てて階段を上がって駆け下り反対側のホームへと降りた。発車寸前の電車に乗り込みその場にへたり込む。とても歩いて帰れる距離ではないので、心底ほっとした。

 一息吐いてから座席に座ろうと思い、立ち上がって車両内へ入る。時間が時間だからか、その車両には僕以外誰も居なかった。

 どかりと座席に座り込み、背もたれに体を預けて脱力して目を閉じる。がたんごとん、と規則正しい音と揺れが心地好くて、僕は次第にうつらうつらと舟を漕ぎ始めていた。自宅の最寄り駅までは随分あるのだから、少しくらい眠っても大丈夫だろう。そう思った。

 どれくらい経っただろうか。不意に目が覚めた時、電車は駅に止まっていて窓の外は見た事の無い場所だった。乗り過ごしたのだ、そう思って慌てて電車を降りる。終点だとしたら、此処から家まで車で三十分はかかる筈だ。駅の名前を確認しようとした僕の後ろで、電車のドアが閉まった。発車。

「……嘘、だろ」

 走り去る電車の音を聞きながら、駅の看板を見上げて呆然と呟いた。

 きさらぎ駅

 看板には、確かにそう書いてあった。

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