4-3
雪が積もっていた。山の中にある廃墟へ行くには少し無理の生ずる季節だ。
僕達は手分けして男に関係していそうな情報を集め、毎週金曜の夜、マヤさんの部屋でミーティングをする事になった。その初回に初めてリョウさんと会ったが、聞いていた通り背は高いが酷い猫背で、一重の目はカミコ先輩とはまた違った鋭さを持ち少々近寄り難い。少しぼんやりした所があるが話してみると意外と気さくで、面倒見の良いお兄さん、と云った感じだった。その素敵なバリトンボイスを僕に下さい。
「もー、煙草止めてってば!」
「吸わないと頭回んないんすよ」
「煙草は寧ろ頭の働きを弱らせるんだぞ」
「他所は他所、うちはうち」
「うちは禁煙!」
「おい、気を付けないと灰が落ちるぞ」
「あっやべ落ちた」
「いやああ白いラグがあああ」
なんてわあぎゃあしながらのミーティングは賑やかで、カミコ先輩は心なしか楽しそうだった。僕と知り合うまではずっと一人で男を探して来たのだから、仲間が増えて心強く感じているのかも知れない。……僕としては、ちょっと複雑な気分だったが。
お互いの持つ情報を合わせて幾つかの推測が出来ていた。
男は霊が溜まる様な所へ赴き浄霊している。
ネットの掲示板を使って情報を集めている。
だからネットで助けを求めた人の元へ行く。
男が行った場所は三年程度霊的噂が途絶える。
人が集まり念が残る所為で再び霊が現れる。
人助けはただ単についでで彼の目的は浄霊。
恐らくは――死んで人を呪う姿が酷く憐れだったから。
「偽の情報流して上手い事釣れねーかな」
ソヨギ先輩の提案は中々良さそうだったが、あの男の事である。きっと嘘ならばれてしまうだろうと結論した。
「人間に絶望したと云うのは私達の思い込みで、人間が好きだからこそ、彼は居なくなったのかも知れない」
帰り道、暗い中でそう呟いたカミコ先輩の声は震えていて、僕まで泣きそうになった。先輩をマンションまで送り届けて乗った電車で、私「達」とは、カミコ先輩と誰を示すのだろうと首を傾げた。
窓の外を流れる景色を眺める僕の頭の中を、いつかの様にキサラギ駅が過ぎる。もしも僕がソレに巻き込まれたら、あの男は助けに来てくれるだろうか。そうしたら、無理矢理にでも先輩と会わせてやるのにと、そう思いながら駅の看板を眺めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます