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その後念の為と云って、ソヨギ先輩は男が山犬と称したイキモノのスケッチも描いてくれた。それはもののけ姫に出て来る山犬に似ていた。アレをもう少し精悍な顔立ちにして――あれだ、ちょっとシベリアンハスキーに似ている。
それも、彼と共に消えた妖かしで間違いないと、カミコ先輩は云った。
それからカミコ先輩は、人間が嫌になって狼の大妖と共に消えてしまった彼に会いたくてずっと探しているのだと話した。僕はもう既に知っている話だったし、大好きな先輩の云う事だから疑うべくも無いのだけれど、普通の人だったら黄色い救急車を呼びかねない様な話だ。
けれどもソヨギ先輩はオカルトを否定する立場にはない様で、実際霊障に遭った人を目の前で見て、それを助ける様子を見たのだから当然かも知れないが、話の全てを信じてくれた。
「俺自身は零感だから、最中も何も感じなかったけれど。霊障に遭った院生の様子の変化とか色々見ちゃうとね、ああやっぱりそう云うモノは居るんだなあって、思うしかないですよね」
元々否定派では無かったけれど、と苦笑気味にソヨギ先輩は云った。
「まあそう云う事なら、俺は全面的に協力しますよ。と云っても、あんまり知らないですけどね。取り敢えず俺が知る限りの事を教えます。で、必要があれば、例の院生が俺よりは詳しいんで、話通しておきます」
「良いんですか。口止めされてるんでしょう」
自己紹介以降ろくに喋らなかった僕が急に云った事に、ソヨギ先輩は少し驚いた様な顔をして、それから小さく笑った。
「女の子が困ってるんだ、優先されるべきはどっちかなんて、分かりきってるだろ」
やだ何この先輩男前。
僕が女だったら惚れていた。かもしれない。
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