3話

3-1

 夏の終わり。相変わらず晴れれば暑いが、空は高く吹く風も秋めいている。少し前までは湿気を含んだ重い空気だったが、最近の風はさらりとして心地好い。

 今はまだ陽が高いが、あと一時間もすれば陽が傾きぐっと気温も下がる。間も無く短い秋が来て、それが過ぎれば長い冬がやって来る。

 デスクに詰まれた書類の山から目を逸らし、窓の外を見遣る。あの年、夏の暑さは酷く長引いていた。涼しくなってほっとする間も無く寒くなり、気付けば街は雪で白く染まっていた。

 その、酷く短かった秋の事を思い出す。

 初めて先輩の家に行った秋。夏休みを挟み、漸く親しくなったと胸を張って云える様になった頃。あの、不思議な人との出会い。

 不意にケータイがピロリと音を立てる。噂をすれば何とやら。あの時知り合った二つ歳上の男からだった。忘年会の誘いだ。気の早い事で。

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