2-7

 三日目。

 朝食の席でカミコ先輩の隣に座り、夕べの肝試しでの事を語った。とは云えオチがある訳でも探し人に関係がある訳でも無いので、単に「チトセ先輩は怖がりだったんですね」と云う話をしただけだ。ついでに、今日はどうしましょうかと訊いてみる。正直に云うと、チトセ先輩の話の方がついでだった。

「……心霊スポット、行ってみる?」

 バスに乗る上に更に歩かなければならず、半壊した建物で危険も多いだろうと探索を諦めた場所だった。

「大丈夫ですかね」

「多分……その手のマニアが時々出入りしているみたいだし、大きな危険は無いと思う」

「でも、長靴と軍手くらいはあった方が良いんじゃあ……」

 半壊した建物を調べるとなると、頭上も心配だが足元も心配だ。硝子片なんかがごろごろ落ちていそうだからだ。夏用のスニーカーでは心許無い。汚れも酷いだろうし、壁やドアがどうなっているか分からないから手の保護だって必要だろうと思う。壁から釘が飛び出ているかも知れない。

「……無理にとは云わないわ」

 僕がここで引けば、先輩は一人で行くだろう。それは駄目だ、危険だ、心配だ。

「分かりました。でも、危なかったら引き返しますからね」

 先輩を引きずってでも。

 僕達は宿の売店で水と食料を買い込んでから、昨日と同じく早い内にバスに乗って移動した。

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