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「ばぁさんは昔から紅茶好きだったの?」

 確かこの仕事に就いたのはここへ嫁入りしたからだって言っていたけど。

「ん、いんや」

「好きじゃなかったのか」

「むしろ嫌いだったね」

 嫌いだったんかいっ。今ではこんなに美味しいお茶を淹れることが出来るって言うのに。

「だって甘いじゃないか、茶なのに」

 ・・・まぁ、確かに。紅茶に砂糖やハチミツを入れるのはスタンダードだし、俺も初めて紅茶を飲んだ時は甘いやつだったと思うし。

「こっちは今まで緑茶や麦茶の甘くない、むしろ苦いくらいの茶に慣れていたって言うのに甘いのなんて。最初飲んだ時は吐いたくらいだよ、驚いてね」

 吐くほど? 予備知識が無かったらその反応が妥当なんだろうか、なんて。

「しかもジジィの前で」

「えっじぃさんの前で!?」

「そうさ、見合いの席で吐いたね」

 なんてこった。初対面でそれって良く結婚できたな。

「自分でもそう思うさ。わざとじゃないにしても好意で高い茶をわざわざ淹れてくれたって言うのに吐いちまったから、こりゃ破断だなって思ったね」

 そりゃ思うだろうよ。

「でもね、うちのジジィは違ったよ。あたしと同じで変わってんのさ。普通なら怒ったって仕方ない場面だってのに、うちのは笑ってね。苦手なら仕方ないって。今度は吐かずに美味しく飲める茶を用意するって言ったんだよ」

 へぇ、凄い。心が広い。

「あの時向こうからこんな嫁はいらんって言われていたらここに嫁ぐこともなかったんだけどねぇ。物好きがいたもんだ」

 そうやってばぁさんはクックックと笑う。

 何を言ってんだい。もしかしたらそれがトリガーになってじぃさんがばぁさんを見初めたのかもよ?

「だったら余計嫌だね」

「愛されてんじゃん」

「ジジィとババァに向かって何言ってんだい。あんたは自分の将来でも心配してな」

 なんて今度はこっちに銃口が向いてしまった。失敗。でもま、心配しないで。俺も作ったカクテルを飲んだ瞬間に吐き出されたら逆に燃えちゃうかもしれないし。

「変態だね」

「うるせぇ」

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