未知との遭遇

カゲトモ

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「いやー暑くて死にそうだ」

 扇子を皺の深く刻まれた手で仰ぎながらばぁさんが言った。やめて、シャレにならない歳だから。

「つってもねぇ、暑いってだけで死んじまうことだってあるんだよ。ババァだって例外じゃないだろ」

「そりゃそーだけどさ。ちゃんと水分補給して栄養と睡眠を取ったらそこまで心配しなくてもいいだろ」

 それに歳は歳でもどう見たって元気があり余ってるって感じだし。買い出しに来た俺を捕まえてゆるりと茶を飲んでくらいだし。

「ババァにはね、これくらいしか楽しみがないんだよ」

「なら今日は超楽しいんじゃない? イケメンと茶を飲めてさ」

「は」

 鼻で笑われた。

「鏡見たことあるのかい?」

「毎日見てるわっ」

 この調子なら大丈夫だろ。

 買い出しに来た紅茶専門店の桐嶋堂茶舗の大女将は大のお喋り好きだ。たまにこうやって捕まっては結構な時間喋っていたりする。大女将が淹れてくれた美味しい紅茶とお菓子をお供に。

紅茶も茶菓子も美味いし、大女将の喋りも上手いしでトークが終わらない事も多々ある。あんまり長く喋るもんだからここへ買い出しに来るときは時間を調整していたりするくらいだ。

まぁ俺としても面白からいいんだけど。

「この水出し紅茶美味いね」

「そりゃババァのブレンドだからね」

「え、そうなの」

「あぁ、だから売ってもいないし、その日の気分で作るから美味いときもあれば不味いときもある。あんたは運がいいね。残念だ」

「おい、聞こえてるぞ」

「聞こえるように言ってんだい」

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