第11話 鉄人と鬼畜叶

 萃香が今にもAKの引き金を引こうとした時、ハルはおっぱいの間に手を突っ込んで何やら取り出そうとしている。

 しかし、彼女はなかなか見つけられないようであせあせとまさぐりはじめてしまった。そ、そいつはいけねえ。もう今にもポロリしそうだ。そうじゃなくても見えちゃあいけないモンが見えそう。

 あんな形が変わるまでむにょむにょしなくても……あ、探すのをあきらめた。

 

「み、見つからないです……単なる飾りですし……」

「まずはその邪魔なものをサバイバルナイフで切り取って……」

 

 ハルと萃香の温度感が酷すぎて逆に滑稽に見えてきたぞ。

 しかし、ハルはただならぬ萃香の様子など目に入っていないかのように、両腕を交差させ腰を落とす変なポーズを取り鉄人へ顔を向ける。


「鉄人ハルト十二号、お相手してあげなさい」

『ウオオオオオン』


 ハルの命令に従い?鉄人の口がパカンと開き……尖端が赤色に塗られ、胴体が白の安っぽいミサイルが顔をのぞかせた。

 

「どうですか? 遊んでみたくなったでしょう?」


 こ、こんなおもちゃに誰が惹かれるんだよお。

 ってええ。萃香の目がキラキラしている。

 

「同志! ミサイルっすよ」

「あ、あれはどうみてもおもちゃだって……」

「こ、今度は腕が!」


 萃香の言葉通り、鉄人は膝立ちの姿勢になって腕を突き出す。


『ウオオオオオ』


 鉄人の力が抜けそうになる叫び声と共に、右の肘から先が発射された!

 

「す、すごいっす! 同志! 見ました? 見ましたよね!」

「あ、うん……」


 一メートルも飛ばずに地面に落ちて転がったけど……。

 しかし鉄人は決めポーズを取り萃香へ親指を突き出した。続いて自分の飛ばした手を拾うと彼女を誘う。

 

「胸を叩いているであります。ま、まさか、開くでありますか?」

『ウオオオオオオオ』


 鉄人は胸をポンと叩きドシンドシンと鈍重にこの場から離れて行く。一方の萃香はというと……尻尾を振る犬のようにハッハしながらついていってしまった。

 あんなのでも一応敵は敵なんだよな……。仕方ない。

 俺はずっと固唾を飲んで見守っていたゆめの頭をそっと撫でる。

 

「ゆめ」

「なあに、お兄ちゃん?」

「萃香についててやってくれないか?」

「うんー」


 行かせたくはないが今頼れるのはゆめだけなんだ。

 いざという時はペンギンもいるからなんとかなるはず……。

 俺が行くことができればいいんだけど、そういうわけにはいかない。

 

 だってこっちの方がまずそうだから……俺は卑猥ないっちーへ体を向けた。

 俺たちがハルと対峙している間もつばさはつかず離れずで拳を振るい、いっちーと激しい戦闘を繰り広げていたのだ。

 しかし、いっちーの巧みな触手捌きによって彼女の拳は全て無効化されてしまう。

  

「つばさ!」

「きゃ、きゃああああ」


 いっちーの触手がつばさの胴体に絡みつく。左右に腕を振り抵抗するつばさだが、逆に手足を触手に拘束され身動きが取れなくなってしまった。

 こうなるともういっちーのターンである。

 奴の目的はただ一つ……そう脚だ。

 

『……タイツ……グゲ……タイツ……』


 とってもいやらしい動きでつばさの太ももを這うように触手が動く。

 ふとももをこれでもかとムニムニさせる触手であったが、ピタリと動きを止めた。 


『……ナイ……タイツ……ナイ……』


 そらなあ。つばさは魔女っ娘スタイルだから生足なのだよ。

 そんなこと見れば分かるじゃないか。あ、ひょっとしていっちーは視力が余りよくないのか?

 だから触手で確かめないと気が付かなかった? 

 いや、そんなことを考えている場合じゃねえ。

 

「つばさ、まりこ、今助ける!」


 何だあれは? つばさにまとわりつく触手がスカイブルーからクリムゾンに変色していく。赤色に変わるってのは怒りを表現しているに違いない。

 その証拠に触手はあれほど執着していた太ももを這いずり回ることをやめ、彼女の太ももの付け根、足首、わきの下、腰……と身動きが取れないようにがっちりと固めてしまった。

 太もも以外が触手に支えられるだけで拘束されていないまりことは対照的だ。

 や、ま、待て、待てえ。いっちー。

 

「お楽しみのところ悪いですが、あなたの相手はボクですよ」

「ちょ、はやく助けないと」


 このままではつばさがいけない縛りをされてしまう。

 しかし、ハルが俺の肩をグイっと掴み行かせてくれない。

 ええい、この程度……俺が振りほどけないとでも思ったか!


「勇者のお兄さん……」


 体を振るもののハルに先回りされ道を塞がれてしまった。

 しかし彼女の様子が変だ。頬を蒸気させ上目遣いで見つめてきたかと思うと、俺の手を両手で握る。

 

「え……?」

「ぎゅっとしてもぺろーんしてもいいですよ?」


 耳まで真っ赤にしてつま先立ちになり俺の胸に顔を埋めるハル。更には彼女の口から荒い吐息が漏れているではないか。

 続いて彼女は俺の手を引き自分の服の下へ……。

 

「な、生……ま、まずい、それはまずい」


 な、なんちゅうところに手を入れさせるんだ。い、色仕掛けで俺が落ちるとでも思ったか。

 急いで手を引き抜こうとしたが、指先に何か硬い物が当たってしまう。こ、これは……。そのままつねっちゃおうかなあ。

 い、いかん。誘惑に負けては。俺は開いているもう一方の手でつっこんでいる腕を掴み一気に引き抜いた。

 

「ハアハア……俺にそんな手は通じねえ」

「かかりましたね。ボクの能力に」

「ん? 能力?」

「そうです。ボクの能力は嗜好の反転。あなたの能力は気持ち悪い虫を操るものでしょう。さぞ虫がお好きなんでしょうね」


 こ、この小娘。言わせておけば。俺……俺様はなあ。生物部に所属しているだけあって、トカゲも蛇もそして虫も大嫌いだ!

 しかし、こいつ自分から息を吹きかけて来たりして誘ってんだろ。なら望み通りやってやろうじゃねえか。


「あの小さな子の能力が不明だったのですが、ひんにゅーがつれていってくれましたし。ここでリーダーのあなたを潰せばボク達の完勝です」


 でけえ胸を反らしやんややんや言ってやがるが、なめてねえかこいつ?

 

「お前、俺様がスキルを使えないなんて何で思った?」 

「え? 虫さんが大嫌いでしょう?」

「おう、そうだぜ。一種類を除きなあ! 覚悟はいいか? 小娘」

「ま、まさか、ハッタリですよね?」

「俺様は冗談と生意気な奴が嫌いなんだ。出でよ! 我が愛する虫たちよ」


 手を掲げると、俺の呼び出しに応じた黒い宝石と見紛うばかりの虫たちがわらわらと出現してくる。

 一方、小娘は俺のしもべたる虫たちを見ると畏れおののきペタンとその場で座り込んでしまったじゃねえか。全く拍子抜けだぜ。

 

「と、飛ばさないで。もう無理です。無理ですうう」

「ほう、飛ぶのがいいのか? なら、一斉に飛び上がるがいい。我が虫たちよ」


 カサカサとうごめいていた虫たちは、俺の命令に従い心地よい羽音をたて飛び上がる。

 廻れ廻るがいい、虫たちよ。小娘の周囲を存分になあ。

 

「ひいいい、な、何でも言う事を聞きますから、ゆ、許してください。それだけはそれだけはあ」

「あ、ああん? じゃあ、まりこたちを解放しろ」

「は、はいい。今すぐ解放します」


 さすが我が愛する虫たちだ。威嚇するだけで完全にこの小娘を言いなりにしてしまった。


「よおし、まりことつばさは触手から逃れたな」

「言う通りにしました。も、もういいですよね?」


 んー、俺は口の端を吊り上げ酷く邪悪な顔をして…… 

 

「やだね」


 と吐き捨てた。

 

「そ、そんな。何でも言う事を聞きます。ご主人様」

「ほう。そうかそうか。俺様の魅力がやっと分かったか」

「は、はい、充分に理解しました。ですので……ボクを直接、その手で触って欲しいです」

「ふむ、なら自分からこっちへ来い」

「はい。ご主人様」


 小娘は怯えた表情で俺を見上げ、自分の胸を覆う布に手をかけた。


「や、やっぱり……は、恥ずかしいです。そのまま中に手を入れていただけませんか?」

「まあ、いいだろう」


 俺はくいっと小娘の顎をあげじーっと見つめた。すると、彼女は緊張に震えた顔からトロンと惚けた表情に変わる。

 満足したところで唇を奪ってやろうかと思ったが、まずは胸から味わうとするか。

 ははははは!

 

「あ、あれ……俺は一体何を……ご、ごめんなさい!」

「はへ、戻ってくれたのですね。よかったです……」


 一体何が起こった?

 俺は確かにハルの胸から手を引き抜いたはずなんだ。しかし、俺の手はまだムニュムニュを味わっている。

 

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