二十三の段 名君への第一歩(中編)
「土方義苗さまと他の大名4人が
茶坊主の
将軍さまも大名と一人ずつ会っていたら
「うっ……。な、何だ? 急に
おやおや? 部屋に
どこかに隠れているミヤが眠たくなる煙を定信さまがいる部屋に送りこんでいるのでしょう。
「ああ……こんな
ミヤが
「く……。こ、この程度で私は
おお、すごい
しかし、歩いて行くのよりもずっと遅い。この遅れが定信さまの命取りになりました。
白書院に
「へぇ~。おまえの藩、借金が9千8百両もあるのかぁ~。あははは! だっせぇー!」
「最初、そのことを知った時は頭がおかしくなって、きゅっ、きゅっ、きゅう~♪ と歌いながら
「ぶはははは! マジ受けるぅ~! 義苗、おまえ面白いな。気に入ったぞ。
「ははー! ありがたき幸せです!」
この光景を見た定信さまは、
(そんな馬鹿な。あの
と、おどろきました。
いや、特におどろくことじゃないと思いますよ?
家斉さまは18歳の高校生将軍です。大人に
「う……上様! 官位をあたえる必要はありません! その者から今すぐ領地を取り上げてください! 菰野藩を取り
「うるさいなぁ~。急に
楽しいおしゃべりを
「こ、この者は、上様の許可もなく江戸をぬけ出し、つい最近まで自分の領地にいたのです。おそらく、菰野の大相撲を見物するためでしょう。これは
将軍さまのご
「義苗どのが菰野にいたじゃと? まっさかぁ~! ワシ、菰野の大相撲を見物してきたけど、こんな美少年と会わなかったぞい?」
「ええ⁉
定信さま、ビックリ
どうやら、あのアホな隠密たちはチカじいが菰野にいたことに
さすがの定信さまも、将軍の次にえらいチカじいが勝手に江戸をぬけ出していたことを責めることはできません。弱々しい声で「本当です。私の隠密が義苗を見たのです。信じてください、上様」と言いました。
一方、義苗さまはいっさいの
「宗睦のじいさんの言葉を信じる。オレはじいさんが大好きだから」
「上様。ワシのことは、これからはチカじいと呼んでくだされ。ある美少女からもらったあだ名なのじゃ」
「いいなぁ~。オレもその美少女と仲良くなりた~い」
家斉さまは、すっかり
「し、しかし……!」
「いい
家斉さまがすっかり仲良くなった義苗さまをかばうと、他の大名4人も、
「新入りの少年大名をいびるなんて、老中さまマジ恐いわぁ~」
「
などとひそひそ話を始めました。
定信さま、
(しまった……。私の
ワイロ政治をしていた田沼意次は悪いヤツ! と
義苗さま、今です! 定信さまの
「世の中には、自分のそっくりさんが一人か二人はいると聞いたことがあります。たぶん、定信さまの隠密が見たのは、私のそっくりさんでしょう」
義苗さまは
ありゃりゃ? せっかく定信さまをやっつけるチャンスなのに、暴露しないんですか?
「……土方義苗。おまえは隠居の雄年から私の秘密を聞いているのだろう。なぜ、上様の前で暴露しようとしなかった」
定信さまも
「私の
「……自分がしてほしくないと思うことは、他人も
「はい。そういう思いやりを持たないと、立派な人間とはいえません。それに、他人を
「た、たしかにそうだ。武士は卑怯なことをしてはいけない」
もともとマジメな性格の定信さまは、自分はさっきまで卑怯なことをしていたのだと気づき、顔を赤らめました。
「私は早く出世をして、この国の全ての民が安心して暮らせるような清く美しい政治をやる老中になりたかったのだ。まだ若くてあせっていた私は、自分の夢を実現させるために当時の老中・田沼意次にワイロを贈ってしまった。
……その後ろめたい過去を知っている菰野藩をお取り潰しにしてやろうと
「そんなにご自分を追いつめないでください。誰にだって失敗は……」
「私は責任を取って、この場で
「ええーーーっ⁉」
定信さまは
ちょ、おま……! 何やってんの!
「ちょっと待って! ちょっと待って! 落ち着きましょう、定信さま! だ、誰かぁー! 誰か助けてくださーい!」
義苗さまは江戸城の中心でヘルプを
武士は
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