十四の段 湯の山温泉
「義苗どの。
「
義苗さまはあきれてそう言いました。
そうなんです。60数名の力士たちがそろそろ菰野藩にやって来るという手紙が、昨日、
「たくさんの力士たちをどこに
「あるよ。温泉なら、菰野藩の
「え?」
「
「えええーーーっ⁉ こんな
義苗さま、何もそこまで
でも、気持ちはわかりますね。なーんにもない
「でも、
まーた松平定信さまですか。菰野藩はとことん定信さまに
「その
「『絶賛さびれつつある』とか言わないでくれ。悲しくなる。……実は、今、あるお方が湯の山温泉にお
「あるお方とは、
「松平定信さまに勝つための切り
馬公子さまはそう言い、ニヤリと笑うのでした。
というわけで、義苗さまは、馬公子さま、ミヤ、
ハギちゃんは、大相撲菰野場所を
ドラぽんも、もうすぐやって来るお相撲さんご一行の宿の準備を馬公子さまに押しつけられたため、不参加。
「うわーん! それがしも温泉に行きたかったのにぃ~! 胃が痛い胃が痛い胃がいたーい!」
さて、
湯の山の
(山道はやっぱりきついが……。
義苗さまは、御在所岳の美しい自然に心
山にはたくさんの花があります。
たとえば、
明るく
シロヤシオという大きな木には、
(菰野にはこんな
自分の領地の美しい自然を見て、義苗さまは殿さまとしての
「殿さま。気をつけてくださいです。
山道の
「また松平定信さまの
「ピョンピョン左衛門どの、発言するたびに
南川先生がピョンピョン左衛門の口をふさぎ、そう注意しました。
「
邪眼の二郎、お腹にガスでもたまっているのでしょうか……。
「どんな
馬公子さまがそう言い、義苗さまご一行は再び歩き始めたのでした。
「くっさ……。おまえ、おならをする時は一言ことわれよ」
義苗さまご一行を尾行中の
「許せ。
「言っている意味がわからない……」
「そんなことよりも、さっき
邪眼の二郎は、疾風の一郎が抱いている子熊を右目でチラリと見ながら、そう言いました。
「この子熊を何に使うつもりなんだ?」
「子熊を温泉街に
「なるほど。菰野の若殿が大ケガでもしたら、大相撲どころではなくなるな。……それにしても、本当に江戸を
「アホな菰野のご
……義苗さまも、あんたらにだけはアホ呼ばわりされたくないでしょうな。
それにしても、子熊を
本当にクマったヤツらですな。クマった! クマった!
え? 寒いギャグはやめろ? ごめんなさい……。
「あそこの
馬公子さまが古い橋を
「ああ。
大石内蔵助とは、『
大石内蔵助たち
内蔵助は、討ち入りを決行するために京都から江戸へ向かう
内蔵助たち赤穂浪士は主君の仇をとった後、幕府の命令で
「うおおお‼ 悲しすぎるぅぅぅ‼ 涙橋にそんな悲しい物語があったとはぁぁぁ‼」
ピョンピョン左衛門が
いちいちうるさい! 静かにしなさいと、さっき南川先生に
「ぐおおおおお‼」
だーかーらー! さ・け・ぶ・な‼ まるで熊みたいな声じゃないですかぁ~。
……ん? 熊? そういえば、さっき隠密コンビが親熊に義苗さまをおそわせようとしていましたよね? もしかして、この
「まずいな。近くに熊がいるらしい。急いで橋を渡り、温泉街に入ろう」
馬公子さまがいつになくあせった声でそう言うと、義苗さまたちも
「うぎゃぁぁぁ!」
「たーすーけーてー!」
またもや別の声が聞こえてきましたぞ。
あれれ? この声には聞き
「これが湯の山の温泉街か。けっこう立派じゃないか」
涙橋を渡った後、くねくね曲がった急な山道を歩き、義苗さまご一行は温泉街の入り口に
なるほど。たしかになかなかよさそうな温泉街ですな。
入り口にある
「菰野藩の三代藩主・
馬公子さまの言う通り、「
「何かあったのか、橘屋」
馬公子さまは、橘屋の主人である30代前半ぐらいの男に話しかけました。
「それが……。馬公子さま、大変なのです。温泉旅行に来られた
「何⁉ 尾張藩のご一行が
尾張藩は、前にお話した将軍さまの次にえらい尾張徳川家のことでござる。
「尾張藩士はよく湯の山に来ているのですか?」
「ああ。尾張の国は伊勢の国の
……しかし、
「ええ⁉ そんな重要人物の『あのお方』って、も、もしかして……」
「尾張藩のお殿さま・
「ええーっ⁉」
あ、あわわわ。徳川将軍家のご
「殿さま、おどろいている場合ではありません。近くで熊が
南川先生に肩をたたかれ、義苗さまは何とか
「そ、そうだな! みんなで力を合わせて、宗睦さまご一行を見つけるんだ!」
果たして、徳川宗睦さまはご無事なのでしょうか⁉
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