第429話 濃厚接触者の家族!?!?

 母が電話口でしゃべってる。

「じゃあ、濃厚接触者の家族で――っていうこと?」

 何やら不穏! だれだれっ? 濃厚接触者って単語が出てくるってことは、コロナ陽性者が近くに出たってことだよね。

 どうやら姪っ子の保育園で陽性者が出てしまったらしい。

 姪っ子は先週保育園を休んでいたのに、濃厚接触者とみなされ、検査キットを渡された。

 結果は陰性。

 だけど、念を入れて病院へ行くと、キットは一万九千円するという。

 母は即座に反対していた。

「そんなにかかるのなら、やめたほうがいい」

 危機的状況の下でその判断は吉と出るのか、不安……。

「じゃあ、明日のNちゃん(甥っ子。母には孫)の英語、どうしようか?」

 母は極めて危険な判断を下した。

「飛沫感染だし、空気感染じゃないから、Nちゃんとだけ、三十分くらいでひきあげる」

 待って! 濃厚接触者の家族だと言っているのに、無防備に家庭教師をひきうけるわけ?

 反対! 断固反対! 何考えているのよ。

「お母さんが濃厚接触者の家族と繋がってて、もし陽性になったらおばあちゃんだって、わたしだって無事じゃいられないのに。わたし学校でそんな話できないよ?」

 じゃあ、やっぱり断る、と言っていたのに受話器をとって一言、母は。

「お母さんはワクチン三回目、打ったの。だからコロナかからないわ」

 三回目を打っていた? それは初耳でリピートした。

 そしたら母は調子に乗って、

「ワクチン三回目を打ってるんだから大丈夫」

 また!

「おかあさんが接触したら、おばあちゃんとわたしが危ないんだってば!」

 ほんとによ。

 考えてほしい。

 どこにも逃げ場のない家族のことを。

「じゃあ、断るね」

 初めにそうしてっ!

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