第424話 祖母が倒れる夕飯時

 母が食事を作っているときに、そのとなりからドテッと音がして、察するに誰か倒れた――母はキッチンの奥に見えるし、これは祖母である。

 慌てる母。

 観察してみるわたくし。


 祖母の足から右足のスリッパだけが脱げていた――そのスリッパはひしゃげている――足元が危うかったならばこれが原因の可能性ありとみた。

 母はしきりに祖母の後ろ頭をかきやって、白髪をかきわけ傷はない、だが中は見えない、と繰り返している。

 猫が彼女らの足元でこちらを見上げていた。

 母はなんでも口に出して考える癖があるので、

「**の脳神経科がいい。**には脳神経科があるが、CTスキャンしてもらえばいい。中は見えないけど、CTスキャンしてもらえば見える。電話しよう。電話番号を聞こう」

 と言い終わってから電話口に立った。

 そしてイチレーヨンを打ちこんで、同じ調子で**の電話番号を聞き出し、脳神経科に電話した。

 母のそれからの行動は素早かった。

 祖母の部屋から上着と貴重品入れをとってきて、祖母がパジャマの上からズボンをはいているすきに、わたくしの食事をよそい、祖母の準備が整った、と告げたらすぐに持ち物を持たせて手を引いて外へ向かった。

 母が案外行動的で口あんぐりだったが、祖母は十二月に一度後ろ向きに倒れて外傷を負ったから、心配だったのだろう。

 あと、なにやら覚悟のようなものが決まったというか、腹がすわったというか。

 この一件はまだ解決をみていないのだが、その素早い対応と準備のよさが嵐のように胸の上を駆け巡った。

 そしてお友達にDMした。

 カクヨムのフォロワーさんにも、コメント欄でお知らせした。

 そのうえでこれを書いている。

 どうか。

 どうか何事もありませんように!

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