第425話 無事だった祖母
脳神経科へ行って、その日のうちに結果は出た。
帰ってきて荷物を置いて、ご飯を食べたんだと思う。
あのせわしさとうるささが何だったのかと思うほどに、静かだった。
「どうだったの」
となんとなく察しながらも、聞いてみる。
「無事だった」
よかった! よかったんである。
「スリッパを新しくした方がいいよ。おばあちゃんの」
と言ったら、母が自分のスリッパを脱いで祖母のスリッパととりかえた。
いざというとき、なにが幸いするかわからないから。
それにしても、祖母は無言。
母が話しかけても答えないので話題が尽きるのが早い。
わたくしはそんな無駄なことはしない。
ごはんは静かに食べるものだ。
少し……疲れたな。
某小説投稿サイトの特訓も、ここらへんで一息入れよう。
カクヨムの黒い画面に慣れていたせいか、白々としたブルーライトが目に痛い。
音声読み上げを使っているとはいえ、文章を読まないわけにはいかない。
東言葉の音声読み上げ機は、方言を再現できない。
心身ともにつらい状況が続いた。
もう、休もう。
母がこれからのことを細々と指示していった。
干しものを外に出すのはわたくしの仕事。
雨戸を閉めるのもわたくしの仕事。
祖母の世話を焼くのは母の仕事。
わたくしの中では祖母が一人で生活できないのではないかという、疑念が起こっていたが母もわたくしも、弱っている人を見ると「自分が頑張らないと」という使命感にかられる性質なので不満はない。
不満はないが、不安である。
最近は祖母、パジャマの上にカーディガンを羽織った姿で過ごしているが、これが冬に入る前だったら、決して考えられないことだった。
すべては、十二月のあの日、後頭部を門柱にぶっつけてからというもの、朝の七時に起きて味噌汁を作っていたのが噓みたいに、遅起き。
なぜだか知らない。
母は出かけるぎりぎりまで寝ているから気づいていないらしいが、六時前に猫の餌を用意するわたくしには奇異に映った。
情報は共有すべきだとは思うが、今の状態で母が気にとめるとも思えないし、祖母も単に寒いから寝床から出ないだけかもしれない。
寝たきり状態でないのだから、うん、まだいい方。
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