第422話 祖母のTV

 祖母はどうやら、耳が遠いらしく、TVをやたら大きな音でないと聞こえないという。

 放っておくとメモリをガンガンあげていく。

 うるさくてたまらないので、頼みこんでメモリを下げさせてもらうのだが……


 祖母はひとたびTVの前を離れると(つまりわたくしがTVを観ていると)

「うるさか」

 と言って音を小さくしていく。

 はい?


 また、夜中までTVをガンガン観てるなと思っていたら、そのまま自分の部屋に行って寝てしまう。

 TVの電源をどうして切らないのか。


 これは想像だが、祖母は寂しいんじゃないのか。

 耳が遠いと、人との会話に入っていけない、疎外感のようなものでもあるのじゃないか。

 それで、TVの音を鳴らすことで埋め合わせている。

 寝る時も音がしないのでは、寂しいのでつけっぱなしで寝たい。

 子守唄替わりに。


 ちょっと本人に確かめてみたいものだ。

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