第273話 うををー。フィン感!(ネコの大工)

 感激! 

 水木はこう思いました。



「えっ、前回よりもあっさりしている――しくじったか!?」



 けれど、フィンディルさんはかつてツイッターでおっしゃった。

 フィン感の読みごたえは、作品のよさに比例するらしきこと。

 ええ!? じゃあ、童話はだめ? 短すぎたのかな。


 いいえ、褒めも指摘もくださいました。

 わたくしが意図したこと以上の「深読み」をしてくださった。

 だけれど、前回のような熱烈歓迎ではなかった。


 あちゃー、しでかしてしまったらしいぞ。

 がっかりさせてしまったのか。

 つらみ。


 これは本音ですが、こうも思いました。

 せっかくフィンディルさんが、骨を折ってくださったのだ、十分に拝読し、自作の内容を充実させたい。

 正直、その場で改稿を始めてしまいたかったです。


 モチベーションがぐんと上がり、お話を書きたくてたまりませんでした。

 けれど、ちょっと待て、わたくし。

 このエネルギー、胸を圧するこの衝動は、むしろ「フィン感」の感想を書くエネルギーに変換すべきじゃないのか?


 えーきちさんに、のぼせた思考を打ち明けましたら、小説はいつでも書けるでしょうというようなお返事でした。

 そうよ、フィン感への想いをつづるのは、今しかない――かもしれない。

 母がもう寝なさいというので、ゆうべはすぐに寝ました。


 正直、せっかくやる気になっているのに、水を差された気分です。

 仕方ない、ちょっと落ち着いてから、明日まとめあげよう――と、思ったけれどもまとまらなかった。

 フィン感の内容について少し触れますね。


 まず、ネコの大工(自作品)は「弱者が弱者を食い物にする」お話だということでした。

 それで間違いないと思います。

 そして、「健全に機能する社会が弱者の敵になる」というようなことも明記されてありました。


 正直、わたくしはネコの大工のモデルを、まんまなぞって書いたので、彼が母に依存していることをうっすらとしか認識していませんでした。

 母が、お金の面でも、仕事の内容でも苦労させられているらしいと見聞きしたことを、実話ベースだもんねー、とあっけらかんと書いてしまった。

 しかし、そのお話には続きがあったのです。


 調停請求が来るまでの間に、わたくしが必死で弁護士代を渡したり、警察に何度も相談に出向くなどして母を励まし、ときに消耗し、くだんの業者にはすでに払いすぎるだけの金額を払ってきたこと、これ以上支払い義務はないことをはっきりさせて、裁判所の下見までして備えました。

 ここに書くべきではないので、作品に入れ込みたいのですが、挫折しそうなので、こちらにも書きます。


 業者は、調停請求に慣れているということでした。

 そんなに払わない消費者がいるのかと疑問に思いますよね?

 ちがうんです。


 彼は詐欺的手法でもって、リフォーム代を膨れ上がらせ、メールでしつこくつきまとい、消費者を疲弊させ、病院送りにしたこともありました。

 被害者はときに「支払い義務」を放棄し、彼の調停請求にあいましたが、病院に入っていますので払えません。

 そこで、業者は高齢者を狙って同じ手口でお金をせびっているらしいのでした。


 一年たって、また家にファックスが届きました。

「あと47万円しはらわないと、ペンキの保証書を渡さない」と。

 もとより、5年しか保証のない古いペンキを使用するから、安価にしとく、という話でしたから、そんな証明は大した意味を持ちません。


 母はすぐさま弁護士会へ行って、対処法を教えてもらってきました。

 とにかく、無視すること――次に同じものが来たら、支払い義務がないという証明書を弁護士につくってもらい、送り付ければ済むこと。

 でなければ、身の潔白を示すための裁判を起こすこと。


 などです。


 ネコの大工には、お医者と裁判所が社会の機能を果たしたことが書いてありましたが、反対にメスネコを助ける社会もあったこと、そう――弁護士と警察のことを書いていませんでした。

 その辺のことは水面下で行っていたために、言及しづらかった。

 しかも、子供のわたくしが熱心に働きかけていた。


 これは、お医者+裁判所VS警察+弁護士の構図になりますので、また一つ複雑さを加えることとなります。

 同じ作品はフィン感に応募できないけれども、ここまでの精緻な読みをしてくださった、フィンディルさんに「このお話を変えますよ」とだけ告げて、ここは締めて、お礼エッセイは次に回したいと思います。

 今は頭の中を整理するので精一杯です。


 あー、わたくしって不器用。

 人のことはよく見えるのに、自分の行動や思いを書くのは苦手です。

 でも、だから小説を書くのです。






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