第249話 2020/06/09/火 フィン感、今ならもらえる!(無料)

 タイトルがチープなのはわざとです;

(なにかのCMみたいにしたかった)


 フィンディルさんという人は、一言でいえばピュア! とっても優しい方。

 だけど、お仕事はしっかりなさるの! 知らなかったでしょう? わたくし知ってる。

 えっへん! おりこう。


 というのは置いておいて、実際にフィンディルさんの感想をいただけるらしい(信じてない)と思った時、緊張で体がこわばった。

 両腕が、PCの前で、ピシィッと固まって、指がぶるぶる震えた。

 うれしいの! 確かに! けど、震えちゃうもんなのよ! なぜか。


 怖いです。

 心の中を覗かれてしまうのが、怖いの。

 だって、あれは……あの作品は、中学生の頃の、生意気だったころの負けん気をこれでもかとこめた、ちょっと異質なものなんだもの。


 正直、ゆあんさま企画の<筆致は物語を超えるか>【葉桜の君に】に、三つも四つも、作品を乱発するのはどうかという意見が身内から上がっていた。

 でも、わたくしにはこのフィン感に応募した三つ目の【葉桜の君に】を書かねばならない理由があった。

 それは……。


 えーきちさんというカクヨムユーザーさんの【葉桜の君に】をヨムした時にさかのぼります。

 とっても、よかったの。

 こう、胸がね、ぎゅっと絞られるように切なく、哀しく、そしてうつくしい物語だったの。


 この方の名前をわたくし知っていた。

 昨年、角川つばさ文庫の賞に、わたくしも【おとぎのびんづめ】を応募していたの。

 だけど、芳しくなく、落選に終わった。


 中間にも通らなかったのに、おかしいでしょ? どうして一次選考通過者の載っているHPを見ていたのか。

 自分でもわからない。

 とにかく、タイトルが、カクヨムの人で通った方が本当にいるのか、確かめたかったんだけれど。


 そこに、なんとかセブンワンダーズっていうタイトルと、えーきちっていうお名前が載っていたの。

 おや、おもしろそうな。

 そういえば、カクヨムのランキングに……いや、わたくしランキングの見方を知らなかった。


 だから、その時初めてえーきちさんのお名前を発見した。

 それだけなんだけれど……その一次選考突破者のえーきちさんは、ゆあんさま企画の<筆致は物語を超えるか>【海が太陽のきらり】で有名人だった。

 ゆあんさまの近況ノートで開催されていた『フレーズ評価』っていうもので、これでもかと他薦されていた。


 それで、ゆあんさま企画に参加しようと思ったのね。

 厳密にいえば、企画第一弾【明日の黒板】から、それらの作品はヨムしていたんだけれど、企画作品だって気づかなかったの。

 うかうかしてたわ。


 で、いろいろあって、桜が好きだったので『葉桜』から企画に参加することにしたの。

 でも、やっぱりはかばかしくなくて。

 書いてから間をおかずに、UPしてしまうのがいけなかったんだと思う。


 でも、あれは、手書きで一度紙面に落としこみ、推敲してからPCに打ちこんだものだからと思っていた。

 A4のOA用紙にボールペンで書いたものを、清書する感覚で。

 で、用紙に書かれたものとは違う出来のものが画面にできあがるので、有頂天になってしまった。


 これぞワープロ機能のマジックというやつで、字面が整っているのでこれでいいと思ってしまう。

 ちょっとおかしいなと思っても、脳内完結して素通りしてしまっていた。

 UPした後も、ちょこちょことは直すんだけれども、余裕がない。


 あ、これ怒られるわね。

 恥ずかしい。

 けどまあ、そんな調子で二作目まで書いて、それからえーきちさんの作品を見たの。


 なにか、ひらめいた。

 この作品には、青春のせつなさと、汗とがきらめいている。

 だけど、ないものが一つある――って。


 それが、人間としての生――生殖と出産。

 これだと思った。

 思ったら、止まらなかった。


 出産するヒロイン、桜子が、すでにわたくしの中で、芽生えていた。

 その子は、望まれて産まれてくるのか? はたして幸せになれるのか? そのときヒロインは――? わたくしはこれを書きたかった。

 テーマは生。


 だけど、悩んだ。

 なぜならテーマともいうべき葉桜は、生殖機能をもたない、クローニングの末に生まれたものだったから。

 えーきちさんの近況ノートへ乗りこんでって、いろいろ質問したら、やっぱりだめだ。


 この桜子は――産まれちゃいけない。

 そういう結論が出た。

 お水の世界でタブーなのは、身ごもること。


 きれいなお姫様が、お腹を大きくしている図なんて、誰も見たがらないに違いないと思った。

 わたくしは葛藤の末に、身ごもった桜子を捨てようとした。

 一生闇に葬る気でいたんだ。


 だけどね? 一度芽生えて、自分の中で育ちつつあったヒロインだよ? そう簡単に消えてくれると思います? 消えやしないんです。

 で、わたくしはその対抗策として――生まれた三人目の桜子を頭から追いやるために――もう一人の自分を生み出した。

 経験は何よりの宝だよ、まったく。


 逆にこれらの葛藤がきっかけとなって、またえーきちさんのアドバイスもあって、わたくしはこの異端出生児の桜子を四人目としてUPしてしまうことになるんだけれど――その前に、本当は四人目だった、わたくしの分身桜子が三弾目としてUPされるという、非常に入り組んだ構造の――姉妹桜が生まれてしまった。

 三人目の桜子は、生きることに執念を燃やし、捨てられたはずの闇の中から蘇った。

 そして、わたくしの分身である四人目の桜子は、形もいびつなままに放置されることとなった。


 この、カクヨムに。

 ごめんね、桜子、わたくしあなたが嫌いだったの。

 見たくもなかった。


 だけどね、もう芽生えてしまった三人目を殺すために、あなたには生まれてもらったの。

 そんな存在、愛せない。

 わたくしは、わたくしを愛せない――そういう性質だったの。


 そんなとき、フィンディル感想、略してフィン感の存在を、れいのえーきちさんたちの近況ノートをはしごしていて見つけた。

 フィンディル? 日本人じゃないの? どこの国の人って思った。

 だけど、れっきとした日本語を操る、パワーを持つ感想を書かれる人だった。


 いいなあ。

 思うのはそれだけ。

 でも、抗いきれずに覗いてしまった――その片鱗を。


 Han Luさんという方の作品への感想だった。

 前書きにはあらすじと共に、強く原作を先に読むことを勧められる旨、書かれてあった。

 だけど、そんな時間はない。


 わたくしは難解なパズルを解く技術がない。

 知恵の輪も外せないのだ。

 宿題は回答を見て写す。


 そして――なんの予備知識も持たずにそのフィン感の力を知った――。

 こんな風に、小説を読み解く人があったのか……おどろいた。

 言葉は行きつ戻りつして、Han Luさんの小説世界を多面的、多角的に、とにかくあっちこっちから見まわし、見尽くして、見事に解剖されていた。


 途中からではわからない。

 初めからなめるように見た。

 確かに、これは異質ですらある。


 すごい……! なぜだ、わからない。

 わからないのに、すごいとわかる。

 これがまず異質なものなんだ。


 わたくしはぼんやりとだが、ネットの海の向こうに人影を見た気がした。

 自分のたどってゆくべき場所を見つけた気がした。

 後悔はしないな――さあ!


 そして、フィンディルさんにアクセスした。

 応募受付が五月から常時受け付けに変わるとツイッターで見て、切りこんだ。

 ついでに、見つけたカクヨムの近況ノートにも乗りこんでって、とりあえず、自分のわかることの限りを書き、待った。


 フィンディルさんは、変わった人だった。

 いや、こういう感覚、前にもあった。

 きっと、この人はわたくしを嫌うだろう。


 そんな予感と戦い、時に諦め、それでも。

 過去のフィン感を読み、原作と合わせて引き比べ、そうこうしてるうちに時は巡り。

 とにかく、わたくしはフィン感を求めたのだ――。


 それからはもう、めちゃくちゃだった。

 自分でも何が何だかわからない。

 周りを置き去りにし、時には巻きこんで、フィンディル感想を受けたいと願った。


 それが、今、叶おうとしている――ね? 信じられなくないか?

 しかし、それに言及している場合じゃない。

 いろいろあった。


 友だちとの出会い、そして、仲たがい。

 どうしても耐えきれずその手を放してしまった親友(そう呼ばせて)。

 過去に何度も繰り返してきた、痛みの末に、とうとうわたくしは自覚した。


 わたくしは、仲間でも、友人でもなく、自分を愛してくれる人を求めていたのだと。

 自分が自分を愛せないで苦しいから、救ってくれる人を求めていたのだ。

 どうすればいいのか、わからないから、がむしゃらに手を伸ばしたのだ。


 そういう人は、フィン感には要らない人だと思っている。

 わたくしは、どうにかこうにか、フィン感の管理人であり、感想者であるフィンディルさんに倣って、まずヨムことから始めようとした。

 かつて、何より愛した、著作をヨムことから。


 びっくりした。

 フィンディルさんは、基本フィン感応募者の作品を音読されるのだという。

 おどろいたが、他の人も効果を認めているからやってみた。


 読書の感動が増した! 自分で自分の声に惚れてしまう! わたくしって、こんな抑揚つけてしゃべれるのって。

 奇跡のようなおどろき。

 ヘレン・ケラーが言葉を思い出した瞬間のようだった。


 わたくしは言葉をかみしめ、響きを楽しみ、感動して動けなくなった。

 漫画も小説も、読んだら終いの世界ではなかった。

 味わい尽くさずにいられない、快感があったのだ。


 話をまとめると、わたくしはその経験があったので、自分の作品をより愛せるようになったし、愛してくれる人の存在に気づけた。

 人間関係にはいろいろあるのだが、あえて気づかぬふりをすれば、通り過ぎることもできる。

 無駄な軋轢を生まずに済む方法を自然と憶えた。


 そして、これが問題なのだが――結局、フィン感に応募した作品は、初め六千文字強だったものが、改稿の末、九千文字強となった。


 *これは追記しておきますが、改稿に至るまでに結構な間があり、恐れ知らずの厚顔無恥だったわたくしは、そのままの、丸のままの葉桜第三弾をフィン感に応募していたし、ちょこちょこいじる程度の意識の低さで、えーきちさんに感想を求めた。

 公募を前にしたえーきちさんは、お仕事と執筆と、毎日が大忙しの中、わたくしの葉桜を――今ならそう言える――お読みくださり、詳細な感想(というよりか指摘)を下さった。

 えっ? こんなに読みこんでくださったの? うれしい! 愛情に飢え、言葉に飢えていたわたくしには、とても……なんていうか、ずっとずっと眠っていた意識が覚醒するみたいな感じになり……表現の底上げとキャラの掘り下げと、意図するところを明確にするための情報を補填、改造する、いや改稿っていうか、改造することを決心したのだった。

 

 で、文字が当初よりオーバーしたんだけれども、フィンディルさんは一万文字以内であるならば、応募を受け付けられたあとでも改稿は可能と言ってくださっていたので、安心してらんらんらーと創作を楽しんでいた。

 で、そのことをえーきちさんにちょっと自慢するみたく、報告したら(うれしくて)それはフィンディルさんに報告した方が良いとアドバイスされてそうした。

 ちょっと、賢くなれた気がした。


 フィンディルさんの回答が、前よりあったかく感じて、うれしかった。

 そして、うまくして感想をいただける運びとなったのだが――愛されなかった桜子は、本当は愛されている桜子となって蘇り――ギリギリまでああでもない、こうでもないといじくりまわされ、とうとう、改稿している間にフィンディルさんに読まれてしまった! なんということ――!

 親切にもほどがありますが、フィンディルさんはこらえてくださり、感想執筆中は改稿を控えるようにと注意喚起なすった。


(本当はもっと、丁寧で優しい文章だったのよ? あたたかい言葉の一つ一つがうれしかったわ)


 そして、震えに震えて眠られぬ夜を過ごし――今日、これを書いている。

 もう、わたくしはなんにもできないし、してはいけない。

 歯がゆい思いもしないではないのだけれども、そういうお約束事である。

 

 そしてそして、今夜もまた眠られないのでツイッターをいじりまわすのであろうなあ、というご報告に相成りまして候。

 フィン感! よろしくお願いいたします!!!

 怖いよー! まだ直したりないのに、ひえーい!(でも自業自得!)


 自分のキャラは愛してあげましょう。

 今日の分の日記おしまい。







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