第248話 2020/06/07/日 白猫
朝食後、母が近所の野良猫の話をしだした。
一年間隣の家にいついた白猫が、やせ細っていたという。
ふーん。
母もついに仏心を出したか、と思っていたがそれにはとどまらず、わたくしに
「玄関にあった子猫用フードをあげてきなさい。お皿はいらないのでいいから、お水も……」
と言い出した。
毎食ご飯をもらうよりも、うれしくて、すぐに駐車場にエサを持って行った。
ひびの入った益子焼の湯飲みに水をくんで、置いてきた。死なないで……。
れいのやせ細った白猫を、うちで保護できないかと、母にたずねたところ、
「うちでは保護できないから……」
と。
手遅れになる前に、病院に連れて行って、動物愛護センターへ……そうしたら、助かるかもしれないのに。
でも、殺処分される可能性もある。
今のところ我が家はグレーの判断。
ちょっと前から気になっていたのだけれども。
お隣の家の、白猫がうずくまっている窓辺に、黒い小さな枠が設置されている。
前はなかったから、これは白猫の出入り口なのではないかと推測。
ツイッターで同じような形の、猫用出入り口の画像を見た。
きっとこれだ。
お隣さんは、うちの猫ではないと言いつつも、部屋の中へ引き入れて、エサを与えているのだきっと。
ではなぜ、白猫がやせ細っている?
寄生虫か、栄養失調としか思えない。
与えた発泡スチロールの皿がなくなっていたことから、母がお隣さんが撤去したのではあるまいかと言い出す。
猫が皿をどうこうするとは思えないからだ。
しかし、お隣さんとの関わり合いを思い浮かべると、わざわざうちの駐車場に入ってきてエサ皿を撤去するほど白猫に執着心を見せるとは思い難い。
お隣さんは良くも悪くも、うちに干渉せずだ。
しかし、お隣さんの窓辺にうずくまる白猫の、しどけなさはなんなんだろう。
ひょっとして、うまく姿勢を保てないほど、消耗しているのだろうか?
鳴き声も弱々しいし、うちの子かと思うくらいだ。
まえは、にゃあおにゃあおと激しくて、うるさかったのに。
これは、緊急保護が必要なのではあるまいか?
ちょっとお隣さんに相談した方がよくないか?
あれほど元気だった猫が、今弱々しくなって。
友だちがいなくなったら、スコちゃんも寂しかろう。
野良猫の末路など見せてはいけない。
今夜、もう一度エサをやりに行く。
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