第229話 2020/05/06/水 夢みたいに恋してるっ

 今、エッセイを書こうとしたら、(ベッドの上です)スタっとスコちゃんが枕元に飛び乗ってきて、しっぽをフリフリするのでなごんじゃって。

 何を書こうとしたのか忘れそうです。


 子供の頃、わたくしは空想家でした。

 子供がよく見るという、空を飛ぶ夢をわたくしもよく見ていました。

 上空から見た近所の屋根の様子や、森(そのころはたくさんありました)の姿をありありと思い浮かべられました。


 もしも自分が猫だったら。

 そんな空想をして、近所の塀や屋根の上を、軽い足取りでぼうけんする、夢を毎日見てました。

 フリフリのスカートのついたレオタードで、電柱の上を飛び回り、悪と戦う夢想もしてました(セーラームーンが始まったとき、わたくしの夢がアニメになってる、と思いました)



 今、そんな夢を抱くことはできません。



 日常は窮屈な部屋におしこめられ、家から一歩も出ることはない生活。

 窓を見れば人工的に植えられた木々が見えます。

 ですが、今や森は拓かれ、住宅街の塗りたての壁が悲しく映るだけです。


 でも、今日気づいたのです。

 スコちゃんをだっこしたとき、すでにわかってはいましたが、彼女の目線が宙空を見渡すとき。

 きっと、人間の見ている世界を、見ているんじゃないかなと。


 猫の目はモノクロ世界を見ていると言いますが、目線の高さで見えるものが変わる、それは確かだし、スコちゃんはわたくしがだっこするたびに、周囲をきょろきょろするんですよ。

 ああ、この子はわたくしと同じだ。


 世界を好奇心いっぱいの気持ちで見ている。

 そして、毎日がぼうけんなんだ。

 雨の日に開いた玄関から飛び出して、ポリバケツの隙間をぬってぐるっと巡ったのも、彼女にとってはすごい体験なんだろう。


 そんな昔の自分を思い出させてくれる存在は稀有ですし、大切にしたい。

 彼女といると、忘れていた夢を思い出します。

 今、わたくしは夢見るように、ネコに恋してます。






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