第74話 日々成長

 ダイエットを始めて一日目。

 鏡の中のわたくしは、顎の丸みがごっそりとれて、若返った感がある。

 それだけハードなメニューなのです。


 実はそれだけでもなくって。

 4日前にお迎えしたスコティッシュフォールドの赤ちゃんが、フードを食べてくれないとか、水をあまり飲まないとか、そのわりに部屋から脱走三昧という事件続出で、なんだか心が折れそうになってます。

 エサはササミにしたら食べてくれたし、水はしょっちゅう替えれば飲んでくれるとわかりましたが、問題は脱走ですね。


 スコちゃん、まず部屋から出て、玄関に走ります。

 どうも、わたくしが追いかけてくるのを見越してるみたいです。

 それから、二階への階段を3段だけ登って、わたくしが追いかけてくるのを待っているそぶり。


 わたくしが階段のほうへ近づくと、部屋のドアの近くまで身をのり入れるのですが、そこでわたくしが「これ幸い」と部屋へ追いこもうとすると、フェイントかけてまた玄関へ大逃走。

 主にこの繰り返しなのです。

 逃げるのがうまくなったのか、わたくしで遊ぶのがうまくなったのか。


 一度なんか、わたくし疲れ果ててしまい、二階の廊下にあった洗濯籠に彼女が入り込んだのを見て、それごと運ぼうとしたら、少しパニックになって飛び出してきました。

 二度目は、かごの中に入った瞬間、そばにあった段ボールを蓋にして、がっちり抑えて部屋に運びました。

 にゃーにゃー鳴きましたが、しばらく、部屋に運び込んだかごの中に、出たり入ったりして調査してました。


 それとわかったのは、スコちゃんは体をすりすりしてきますが、別に撫でさすられたいわけでもなく、つきまとうのに任せていると、ご機嫌になってのどを鳴らし、わたくしの体にくっついてきます。

 つまり、自分から触るのはいいけれど、無遠慮に触られるのはなれなれしくていやだ、ということなのでしょう。

 今日も隅っこに入り込むから、のぞきこんでいたら、そのうち、わたくしの目の届かない死角に陣取るようになりました。


 かなしいかな。

 彼女とわたくしの距離感は、まだまだはかりかねております。

 でもそのへんはどうでもいいから、健康で元気に育ってほしい。


 切にせつに願います。






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